ドイツの調査会社・スタティスタによれば、2022年12月時点で世界における検索エンジン市場シェア(デスクトップ)はグーグルが84%を占める1強状態。AI技術による最適化で高い成果を出し、世界中のあらゆる広告主から支持を得てきた。
その結果、グーグルの親会社であるアルファベットの2022年12月期の売上高2828億ドルのうち検索広告は57%を占める。クラウドなどほかの事業は赤字のため、営業利益748億ドルはYouTube広告なども含めた広告系ですべてを創出している(詳しくは「グーグルが生み出した世界最強のビジネスモデル」)。
対して、マイクロソフトの収益は「Azure(アジュール)」などのクラウドサービスやソフトウエアのパッケージ商品「Office(オフィス)」といった事業が軸となっている。Bingはグーグルに次ぐ世界2位につけているが、シェアはわずか8.9%(スタティスタ調べ)しかない。
この構図をひっくり返す切り札としようとしているのが、ChatGPTに用いられている大規模言語モデルだ。
AIに大規模なテキストデータを学習させ、これまでにない自然な文章生成や機械翻訳、質問応答などのタスクをこなさせる。ナデラ会長兼CEOの言う「検索の新たな1日の始まり」とは、検索と生成AIの融合が生み出す新たな体験といえる。マイクロソフトはこうしたサービスを「ウェブのAI副操縦士」と呼ぶ。
グーグルは動かなかったのか
昨今のブレイクスルーが実現したベースには、グーグルが開発しオープンソース化された「Transformer」という深層学習の手法があり、グーグルの大規模言語モデルも存在する。実際、マイクロソフトが新Bingを披露する前日の2月6日、グーグルはチャットボット「Bard(バード)」を試験公開し、数週間内に一般向けにも公開すると発表した。
オープンAIがChatGPTを公開したのは2022年11月のこと。瞬く間に人気を博した段階で、グーグルも間髪入れずにバードを展開できそうなものだが、それができていないのはなぜなのか。自然言語モデルを用いたAI事業に関わる大手企業の関係者の声を集めると、グーグルが「動かなかった」のではなく「動けなかった」のではないかという見方が少なくない。
まず、たくさんのユーザーが利用する前提で高度なAIを用いたサービスを展開するうえでは、サーバー代など莫大な費用を伴う。オープンAIのサム・アルトマンCEOもChatGPTについて「(運用の)コストは目を見張るものだ」とTwitterに投稿しており、ユーザーの大混雑を受けて、2月初めから月額20ドルの有料プランを開始した。
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