その中でアカデミックマインド育成講座の受講対象となるのは、中学3年生全員とハイグレードコースの高校2年生。いずれもカリキュラムに組み込まれた正課の授業として行っている。
「従来、学校教育ではwhatばかり教えていました。それがここ数年潮目が変わり、探究とか主体的・対話的で深い学びが必要となり、howを教えるようになりました。しかしhowの源流はwhyです。『なぜ』を探究しなければ、なぜSDGsが必要なのかがわからずにSDGsを学んでいるようなもの。しかも『なぜ』という本質を探る思考は教えないとできない。自由に主体的で深い学びができるようになるには、こういうふうにすればうまくいくという体験が必要で、その型を学ぶことができるのがアカデミックマインド講座だと考えています」(中村氏)
もちろん、導入までには武蔵野大中高とカルペ・ディエムとの間で綿密な話し合いが行われた。同校サイドでこの講座を担当している教諭の髙橋奈美子氏はこう証言する。
「カルペ・ディエムさんは、こちらの考え方や要望を反映してくれたので、とても助かりました。高校のハイグレードコースでは前期に2時間連続の授業を週1回、計10回行いました。『江戸時代以降、日本人の平均身長が伸びたのはなぜか』というような問いを立て、江戸時代はどういう時代だったのかとか、日本人の平均身長はその頃どれくらいだったのかというように、まず問い自体を分解して生徒がタブレット端末で調べ、解答にたどり着くというのが授業の大まかな構成です。生徒たちはお互い話し合いながら調べていくのですが、そのプロセスが学習そのもので、いい学びになったと思います。カルペ・ディエムさんからは毎回2名の東大生が来て講師役を務めるのですが、生徒たちは『進路に悩んだときはどうするか』とかさまざまな質問もし、いい刺激になっていたように感じました」
前期の講座修了後には、近くの保谷小学校で出前授業を行った。希望した10名の生徒が2つのグループに分かれて、5年生にアカデミックマインド育成講座を体験してもらう授業を実施したのだ。中村氏は、生徒たちがインプットするだけではなく、アウトプットまでを経験できたことを高く評価している。
「アウトプットすることでさらに学びが深くなることを、生徒たちは実体験で知ったと思います。生徒たちは小学生に対してお年玉をテーマに『いつ始まった習慣なのか』『最初お年玉はお金ではなく何をあげていたのか』と問いを投げかけ、ヒントを出しながら『江戸時代に鏡餅を割って分けていたのが起源であること』にたどりついた後、『鏡餅がどうしてお金に変わったのか』『どうしてお年玉をもらえるのか』というようにさらに問いを分解していきました。そうして少しずつステップを踏みながら考えていくことで、小学生はきちんと正解を導き出しました。授業をするためには生徒たちもいろいろ調べ、準備をしました。そういうことも含めて生徒にとって大きな学びになったはずです」