大江健三郎を知り尽くした批評家の大胆な解釈 『大江健三郎の「義」』書評

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『大江健三郎の「義」』尾崎真理子 著
大江健三郎の「義」(尾崎真理子 著/講談社/2750円/320ページ)
[著者プロフィル]尾崎真理子(おざき・まりこ)早稲田大学教授。1959年生まれ。90年代初頭から読売新聞記者として、大江健三郎氏へのインタビューや評論執筆を続ける。『大江健三郎 作家自身を語る』の聞き手、構成を務めた。著書に『現代日本の小説』など。2016年度日本記者クラブ賞受賞。

文芸批評の泰斗、小林秀雄も2ページ読んで諦めたといわれる『同時代ゲーム』をはじめ、大江健三郎作品の難解さには時に手を焼く。評者も途中で投げ出したりして、決してよい読み手とはいえなかったが、本書を読み終えて俄然、系統的に読み直してみたくなった。

著者自身が本書の執筆に取り組むことで感じたように、近代以前までさかのぼる日本の思想伝統に深く根を張る、実に日本的な作家としての大江という、新たな相貌が浮かび上がってくるからだ。

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