なぜ受験生は「夜型になるのか」に納得の学術的根拠、最適な睡眠時間は何時間か 寝だめは不可能、入試1週間前には「朝型」に

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夜更かしは効率的なのか

夜更かしが行われている理由をご説明しましたが、夜更かし自体に何の問題もないのであれば、ことさらそれを取り上げる必要はないでしょう。しかしながら、睡眠と覚醒のリズムが後退することには大きな問題があるのです。

図1は成績と睡眠の関係を表したもので、米国の中・高校生(13~19歳)を対象としたものです。成績が悪くなるほど就寝時刻は後退し、睡眠時間は短縮しています。睡眠時間の後退は、成績だけではなく精神状態にも悪影響を与えます。

図2は、約5000名の日本の中学生を対象にした結果ですが、夜更かしであればあるほど抑うつレベルは高くなります。また、同じ時刻に眠っていても夕方に仮眠をとっているほど抑うつレベルが高くなっています。

夜更かしや夜ではない時刻に眠ることは、私たちの身体のリズムを乱す行為です。わかりやすく言えば時差ボケのような状態です。このような状態では、認知能力は低下し、精神健康も悪化してネガティブな思考となり、よいことは一つもありません。それでも夜更かしして「勉強したつもり」を続けますか?

世界の若者は何時間眠っているのか

皆さんは、そもそも何時間眠っていますか? 日本の高校生や大学生の睡眠時間は、大体6時間程度といわれています。そして、それで「十分」だと思っているのではないでしょうか。しかし、米国の国立睡眠財団が推奨する年齢ごとの睡眠時間によると、6〜13歳で9~11時間、14〜17歳で8~9時間、18〜25歳では7〜9時間とされています。ビックリするかもしれませんが、日本以外の国では、これに近い睡眠時間を取っている生徒が多く、6時間台の睡眠が平均値である国は、世界広しといえども日本しかありません。

そんなに眠れないという人もいるかもしれませんが、北海道で地震の後、全道で停電となった夜には、普段8時間未満しか眠っていなかった中学生が、平均で9時間半眠っています。暗くすれば眠れるんですよ。

寝だめや長い昼寝は百害あって一利なし

夜に勉強して寝不足になった分は、昼寝や週末の寝だめで補える、と思っていませんか。それは、まったくの間違いです。初めに述べたように睡眠と覚醒は、脳の中の生物時計によってコントロールされており、人間の場合、夜に眠り、昼間は起きて活動するのが基本です。昼間に長い昼寝を取ったり、日によって眠る時刻を極端に変えることは、このリズムを乱すことにつながります。夕方の仮眠が多い人の調子が悪い(不安や抑うつのレベルが高く、眠気が強い)のは、このリズムの乱れが原因です。基本的に寝だめは不可能です。それをすることで生物リズムを乱すことにつながり、よいことは一つもありません。

週末に昼まで寝ているなどの人も多いのではないかと推察しますが、日によって生活のパターンを変えることは、いわば自ら時差ボケ状態をつくり出していることに等しい行為です。休みの日にたくさん眠るのであれば、それを普段の日に分けて、平日も週末もできれば同じ時刻に寝たり起きたりしてください。ずっと心身の調子は改善されるはずです。

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