学力や自己効力感が向上?「話す力」を育むプレゼン授業が導入校を増やす訳 1都11市区町が導入、教員研修もセットで提供

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発声練習(左上)、ペアでインタビューや発表を行う児童たち(右上・左下)、マインドマップを作成(右下)

さらに最後は代表して数人がみんなの前でプレゼン。「ほかの国の言葉が好きだから、語学を学びいつかいろいろな国の人と話したい」「水泳が好きだから、たくさん練習をしてオリンピックに出場したい」など、堂々と話す姿は自信に満ちていた。

「私はプレゼンが皆さんに必要な力だと思い、この活動を続けてきました。その結果、多くの人に授業を届けられるようになりました。皆さんも自分が言い出しっぺになって、ぜひ社会を変えていってください」という竹内氏の言葉で、90分のプログラムは締めくくられた。

子どもたちに感想を聞くと、「この授業、全部楽しい!」「プレゼンについてもっと知りたくなった」「難しく考えすぎていたけど、楽しみながらできるんだと思った」など次々と元気に答えてくれた。担任の泉太樹氏も、次のように語る。

埼玉県さいたま市立西原小学校教諭の泉太樹氏

「子どもたちは日頃、原稿を作って話すのは上手なのですが、アドリブで話すのは苦手なようです。中には、自信を持って自分の思いを言えない児童もいます。モデル授業中の子どもたちを見て、『深める』作業をすると、こんなにも生き生きと発表するようになるのかと実感しました。教員研修は1回目が終わったところですが、児童が発表する際は考えを深める時間を長めに取り、自信を持たせることを意識するようになりました。今後、竹内さんがおっしゃっていることを、子どもたちができるようになる授業を展開したいと思っています」

「日本は総力戦で『話せる文化』をつくらなければいけない」

竹内氏は、日本の教育課題として、深い思考をしたり気持ちを述べたりする授業があまりにも少ないことを挙げる。

「日本の子どもたちは、国語の問題で筆者の思いを行間から読み取ったり、調べた結果を作文にしたり述べたりすることは得意です。でも自分を主語にしてどう思ったかを言うことが非常に苦手。自分が何を好きだったのかも忘れてしまうほど、一人称で語る経験を持たせてもらえていないのです。プログラムを通して、この問題の解決に貢献したいと思っています」

公教育の場にもっとプログラムを広げるため、2023年春からは、オンラインでも手軽に授業を受けられるようにする予定だ。子どもたちの変化を可視化するため、専門家による効果測定も進めている。

また、竹内氏は今、「日本は総力戦で『話せる文化』をつくらないといけない」と考えている。例えば、研修をすると「うちの生徒は原稿を作らないと絶対に発表できない」「意見を何でも言うというのは、道徳授業の範囲でやればよいのでは?」など、抵抗感を示す教員もいる。しかし、社会の動向や事例を挙げて丁寧に「話す力」の大切さを説明していくと理解してもらえることが多く、「先生はたまたま外の情報に触れていないだけ」と感じるのだという。

「先日も女性社外取締役の集まりに参加した際、『ビジネスの場で話せない人がこんなにいるのに、なぜ日本はプレゼン教育をやらないのか』という話で盛り上がっていましたが、それは学校だけの問題ではないと思うんです。『話す力』が弱いために世界で負け続けていることや産業界の強いニーズが教育現場に伝わっていない。この人材の流動性が低いがゆえの分断が課題です。学校外の人間は安易に教育界を非難せず、先生たちがすでに頑張っていることを理解し、『話す力』の大切さを伝えていく必要があると思います」

(文:酒井明子、編集部 佐藤ちひろ、撮影:風間仁一郎)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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