学力や自己効力感が向上?「話す力」を育むプレゼン授業が導入校を増やす訳 1都11市区町が導入、教員研修もセットで提供

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「話す力」は、これからの社会を生き抜いていく武器になる――そう語るのは、一般社団法人アルバ・エデュ代表理事の竹内明日香氏だ。国際金融の現場で仕事をしてきた経験から、日本人にも幼少期から「話す力」を育む必要があると考え、学校向けのプレゼンテーション(以下、プレゼン)教育メソッド「Speak UP!プログラム」を開発した。この8年間で導入自治体や学校からの依頼は徐々に増え、受講者は2022年に延べ5万人を突破。その活動の根底には、今の日本の教育や文化に対する強い危機感があった。

「話す力」は、これからの社会を生き抜いていく武器になる

「話す力」を育む活動に奔走する竹内明日香氏は、もともとは新卒で銀行に入社し、国際金融の現場に長年身を置いてきた。そこで痛感したのが、日本のビジネスパーソンのプレゼン力の弱さだったという。

「国際金融の現場で数々のプレゼンや交渉に立ち会ってきましたが、内容は申し分なくても話す力がないことにより日本人は案件を勝ち取れないのです。これは子どものうちから『話す力』を鍛えなければいけない、それがこれからの社会を生き抜いていく武器になる――そう思い、2014年から子どもたちを集めて『話す力』の育成を始めました」

竹内 明日香(たけうち・あすか)
一般社団法人アルバ・エデュ代表理事、NRS社外取締役、一般社団法人未来の先生フォーラム理事
東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て2007年に独立し、海外投資家向け情報発信や日系企業のプレゼンテーション支援を提供して今日に至る。14年、子どもの「話す力」の向上を目指すアルバ・エデュを設立。教員研修や児童生徒を対象としたモデル授業を展開。公立小学校元PTA会長、2男1女の母。著書に『すべての子どもに「話す力」を』(英治出版)

当初は公募型でワークショップを開催していたが、それでは教育に対して高いアンテナを張っている家庭にしか届かないことに気づく。そこで、より幅広い層に機会を届けようと、学校向けの「Speak UP!プログラム」を開発。全国の学校に地道に提案を続けて活動を拡大し、現在では受講者数は延べ約5万人、導入自治体は1都11市区町までに広がっている。

導入校はどのような手応えを感じているのか。例えば、文京区立文林中学校のある学年では、生徒向けに授業を7回、教員向けに研修を3回実施。プログラムを導入した年の文部科学省「全国学力・学習状況調査」の結果は国語、数学、理科において全国平均より約10%上昇、さらには高校入試の結果も創立以来の進学実績になったという。このほか、高校の推薦入試の合格者数が1桁から2桁へと変化した公立中学校もある。いずれもプログラムとの因果関係は明らかになってはいないが、竹内氏はこう語る。

「先生方からは、勉強やスポーツに意欲的になるなどの影響があり、それが学力や入試結果にもつながっているとお聞きしています。文林中の生徒からは、高校入学後に苦手な英語のスピーチ大会で優勝した、生徒会に関わった、部活動の要職に就いたなどの声も。このように自己効力感が上がったと考えられる報告は、ほかの学校からも受けています」

例えば、福井市立円山小学校の5年生84名に対して行ったアンケートでは、授業実施の前後で、「自分が頑張っても、社会を変えることはできないと思いますか」という問いに対して、「とてもあてはまる」「まああてはまる」と回答した生徒の割合が40.0%から19.2%へと半減。「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」と回答した子の割合は36.3%から62.9%に増えた。

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