平均額は約16万3000円、増え続ける「オンラインゲーム課金」

近年、スマホなどICT機器を通じた子どものトラブル相談はどのような内容が多くなっているのだろうか。国民生活センターの山之内優花氏は、「小中高生に関しては、やはりオンラインゲーム課金のご相談が非常に多くなっています」と話す。

オンラインゲーム課金の小中高生の相談件数は右肩上がりで、コロナ禍以降は高水準が続いており、2022年度は3996件に上った。まだICTリテラシーが十分でないからか、とくに小学生の課金が目立つ。

子どもが保護者に泣きついて相談に至るというよりも、保護者がクレジットカードの明細や携帯電話料金の明細を見て高額な請求に驚き、相談するケースが多いという。22年度に寄せられたオンラインゲーム課金の相談では、「支払ってしまった平均額」は約16万3000円、ボリュームゾーンとしては11万~50万円だった。

昔は買い切りのゲームソフトが一般的だったが、今のゲームはオンラインが主流。保護者がスマホをちょっと子どもに貸した際に、そのスマホにひも付くクレジットカードやキャリア決済を利用して課金されてしまうパターンが多いという。

「保護者のお古のスマホを子どもに与え、自宅でWi-Fiにつなげて遊ぶことだけを許可しているケースでも、親の決裁データがスマホに残っていたり、ご褒美などの機会に1~2回課金した際の入力データが残っていたりして、子どもがそれを利用して課金することも多いです。また、どうしても課金したい子どもは『親にバレずに課金する方法』などの情報をネットで探したり、子ども同士で情報交換したりして課金する事例もよく見受けられます」

未成年も多い「サプリメントや美容系商品の定期購入」の相談

同センターでは電話を中心に相談を受けているが、オンラインゲーム課金の相談があった際は、ゲームを提供しているプラットフォーマーとの交渉に入り、そこでうまくいかない場合はゲーム会社と交渉していく。

「まずは私たちのほうで保護者と子どもの間のトラブル要因や今後の対策などを整理したうえで、事業者と交渉しています。しかし、オンラインゲームの事業者側も実際に子どもが利用しているかどうか確認することが困難ですし、ときには交渉に応じないことも。そのため返金についてはケース・バイ・ケースです」

オンラインゲーム課金に次いで多いのが、定期購入だ。全世代でトラブルが増えている領域だが、2022年度は小中高生の相談が2636件に上った。男女比はおおよそ半々で、サプリメントのほか、化粧水や美容液などの化粧品の定期購入に関するトラブルが多いという。

「よくネットで『お試し初回無料』など手軽に試せるようにうたった広告から誘導され、小さく記載された『定期購入』の文字に気づかず注文してしまい、後になって一定回数以上購入しなければいけない契約だったことを知る場合が多いです。中高生の女子だけでなく、男子も美容系の商品を購入するケースが見られ、500円くらいならお小遣いの範囲で買えるからと購入する小学生もいます」

通販はクーリングオフが使えないため、未成年者の場合には「未成年者契約の取り消し」を主張して事業者側と交渉するが、高校生でも18歳成人の場合はその主張ができないのでより注意が必要だといえる。

このほか、ライブ配信の投げ銭なども、数は多くはないものの、相談を寄せられることがあるという。

ちなみに消費者トラブルの引き金となりやすいデバイスとして圧倒的に多いのはスマホで、次いで家族共用のタブレット端末となっている。GIGAスクール構想で配布された1人1台端末を経由したトラブルもゼロではないが、ほとんど見受けられないそうだ。

子どもたちが「何に興味を持っているのか」を知ること

夏休みは子どもの自由な時間が増えるため、やはりオンラインゲーム課金には注意してほしいと山之内氏は呼びかける。

「保護者の皆さんには、まず今の子どもの周辺には課金要素がある魅力的なオンラインゲームがたくさんあることを意識していただきたいです。また、子どもたちはお金を使っている感覚に乏しく、お金の価値を考えずに課金することが多いため、普段からお金の価値について子どもと保護者で話し合ってルールを決めていただきたいと思います」

とくに低年齢の場合は、プラットフォームごとにペアレンタルコントロールを設定することも欠かせない。「決済の際にパスワードが必要な設定になっているか、課金時の通知メールが保護者にきちんと届くのかを確認することが大切です」と山之内氏は助言する。また、祖父母の家に遊びに行った際に、祖父母のスマホを使って高額課金してしまう場合もあるそうで、帰省の予定がある家庭は注意しておきたい。

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(写真:Xeno/PIXTA)

SNSを見る時間が増える中では、定期購入についても気をつけたい。子どもたちは欲しい商品を自分から見つけにいくというよりも、ネット広告を見て気になり購入するケースが多いからだ。

成年年齢が18歳に引き下げられたことが要因となって増加しているトラブルは今のところあまりないというが、高校生を持つ保護者はこの世代のトラブルの傾向についても知っておいたほうがいいかもしれない。

「18歳、19歳の世代は、脱毛エステなどの『美』や、内職・副業といった『金』に関するご相談が目立ち、自らトラブルに飛び込んでいってしまう形が多いといえます。例えば、簡単に稼げるとうたうSNS広告や検索などから副業サイトに登録し、高額なサポートプランに勧誘されるなどのトラブルに発展する場合が少なくありません。そのほか、SNSで知り合った異性に誘導されて出会い系サイトに登録したところ、異性とのやり取りで個人情報を交換するためにポイントを買わされたり、異性の悩みを聞く仕事を始めたところ逆に費用を要求されたりといった出会い系サイト・アプリのトラブルもあります」

現在、保護者が防犯対策として子どもが小さいうちからスマホを与えている場合も多いが、その分、消費者トラブルや犯罪の入り口がより身近になっていることを忘れてはならない。

「新しいサービスが増えると、それだけトラブルも増えます。生まれたときからスマホがある世代と大人では感覚が異なりますので、『子どもが何に興味を持っているのか』を知っておくことが大切ではないでしょうか」と、山之内氏は話す。

政府は毎年7月を「青少年の非行・被害防止全国強調月間」として啓発に取り組んでおり、今年は最重点課題に「インターネット利用におけるこどもの犯罪被害等の防止」を掲げているので、そうした犯罪情報も確認しておきたい。子どもたちが上手にICT機器と付き合いながら夏休みを安全に楽しく過ごすためにも、大人には情報のアップデートが求められている。

(文:國貞文隆、注記のない写真:kouta/PIXTA)