米IT系トップに超エリート続々輩出のインド、拡大する学歴社会の「影」とは 小学校入学時点で「輪切り」にされる子どもたち
インドの教育熱は日本の中学受験ブームと重なって見える部分もあるが、佐々木氏は「日本の公立学校はいろいろな家庭の親と子が集まっているのがとてもいい」とほほ笑む。
「学校選択の自由を認めるということは、メリットもありますが、教育制度の平等性というダムに小さな穴を開けるような面もあると思います。実際、インドでは公立校に貧しい家庭の子どもばかりが集まり、豊かな経済力と文化資本を持つ家庭の子どもは公立校から逃げていっている。学校の問題を指摘できる人もおらず、クオリティーが上がらないという構造になっているのです。インドの教育を研究していると、やはり日本の教育制度は大切な財産なのだと感じます」
進学する人が増える一方で、ホワイトカラーの仕事が不足
教育と切り離すことができないインドの大きな社会課題は、高学歴者の受け皿となる雇用自体が不足しているということだ。佐々木氏は、これは大卒者数が少なかった英国統治時代から続く古典的な問題だと説明する。
「経済発展を続けるインドですが、いわゆるホワイトカラーの仕事の絶対数が不足しています。いちばん高収入で価値があるとされるのは、やはり欧米での仕事です。国内でも少しずついい仕事は増えてきてはいますが、高学歴者の増え方に対して圧倒的に数が足りません。進学する人が増えること自体はいいことですが、『ジョブレス・グロース』ともいわれるいびつな成長は発展途上国に多く、インドは『大卒のバス車掌発祥の地』と呼ばれたことも。現在も、若年層の高学歴者ほど失業率が高いという状況が続いています」
インド都市部では、多くの若者が安定した高収入の職を夢見て、できる限りの学歴を身に付けようとしている。だが高学歴者の数が増えることによって、「学歴インフレ」も起きていると佐々木氏は言う。初等教育で生じた分断が、社会に出てから就ける仕事をも「輪切り」にするインド。学問が格差を超えるための武器にはまだなっていないのが現状のようだ。
(文:鈴木絢子、注記のない写真:Luciano Mortula / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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