女子新御三家の吉祥女子、「脱・進学指導」が生徒主体の決断と自立を促す訳 理系・文系・芸術系も…多様な進路支える教育

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美術系が得意なら、文化祭の「ゲート製作委員会」や「ポスター制作委員会」などで活躍することも可能だ。同校の文化祭「吉祥祭」は、コロナ禍前には2日間で1万3000人の来訪者を集める都内屈指の盛況を誇っていた。「吉祥祭を見て入学を決めた」と話す新入生も非常に多いそうだ。

また、中1から高3までの縦割りで競う運動会も、吉祥女子の名物行事だ。だがコロナ禍1年目の2020年には、密を避けるために大会を全面的に見直した。選手だけが校庭(グリーンコート)で競技をし、その録画映像を全教室に配信。毎日少しずつ競技を行う形式の運動会は1カ月半にわたって続けられた。生徒が発案した工夫も数多く取り入れたという。杉野氏は行事の重要性をこう説明する。

「どんなことが生徒の中にインパクトを残し、心を揺さぶるかは一人ひとり違います。だからこそ協働したり試行錯誤したり、たくさんの経験をすることが大切です。リーダーやフォロワーなど、さまざまな立場を体験しながら、自分の意見を表明したり互いの個性を認め合ったりもする。行事を通じたこれらの経験によって、将来にもつながる大切なものを得ることができると思います」

山根氏も「保護者が『うちの子が責任者を務めるなんて』と、驚いていることもよくあります」と続ける。

吉祥女子中学校・高等学校 広報部部長の杉野荘介氏(右)と、同副部長の山根晶子氏

コロナ禍以前には、中3全員参加による「カナダ語学体験ツアー」や、春夏の休暇を利用したオーストラリア・アジアへの研修(希望制)なども行っていた。こうした取り組みをきっかけに、語学の道に進む生徒もいる。カナダ語学体験ツアーはこの2年は中止となったが、感染状況などを鑑みながら、来年秋に再開できるか検討しているところだ。また、5大学との高大連携協定で開催する「教養講座」は、大学教授などによる専門的な内容だが、熱心に聞きに来る中学生も少なくない。これらの多様な選択肢の中で知的探究心を高める子どもの姿に、「楽しそうでうらやましい」と話す保護者も多いそうだ。

どうやら吉祥女子の教育方針では、決して「進学指導」の最短距離を示してくれるわけではない。たくさんの道を知ることで、むしろ悩みが生まれる生徒もいるだろう。だが赤沼氏は「悩みながら成長すること、その中で自分がやりたいことを見つけること。それこそが勉強するということではないでしょうか」と語る。一見すると回り道のように見える「進路指導」によって、子どもの自立を促し、納得できる進路へ導いているのだ。

(文:鈴木絢子、撮影:ヒダキトモコ)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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