女子新御三家の吉祥女子、「脱・進学指導」が生徒主体の決断と自立を促す訳 理系・文系・芸術系も…多様な進路支える教育
「高校生は春と秋などに担任と個人面談を行います。高校生の面談では理系・文系・芸術系(美術)や科目の選択の相談も行われますが、本校では三者面談の形式にはせず、生徒本人が自らの意思で考えるプロセスを尊重しています。中学受験は相当な部分に保護者の意思が入っていますが、高校生にもなれば進路を自分で考えることができるはず。そのための情報提供は充実させていますし、進む道を自分の責任で決めるからこそ、万が一うまくいかないことがあっても、力強く乗り越えられるのだと思います」
難関大への挑戦と合格実績も学校がたきつけた結果ではなく、「多様な進路プログラムを通して生徒自身が生き方を考え、そのための最善の環境を主体的に選択した結果」だと杉野氏は胸を張る。進路指導室には卒業生による合格体験記が数多く保管されており、生徒はそうした先輩の経験にも背中を押されているという。

また、整った体制による質の高い授業も、結果として生徒の進路を開く一因となっている。例に挙げたのは、杉野氏が担当する理科系科目だ。
「近年は理系科目が好きな生徒も多く集まっていますが、吉祥女子には理科室が4つあり、実験助手も3人います。こうした環境で、中学のみならず高校でも理科実験を数多く行うことは本校の特徴の1つでもあるでしょう。大学入学時点で実験器具の基本的な扱い方やレポート作成の方法が身に付いているので、卒業生からは『他校出身の同級生を助けてあげることが多い』という声をよく聞きます」
知的探究心に応える環境を用意すれば、生徒たちは自ら積極的に情報を収集し、それぞれに学びを深めていくと語る杉野氏。その結果が、難関国公立大合格者数や、理系大学も含めた合格者数の安定的な実績につながっているともいえそうだ。2022年には国公立大の理系学部に48人が、国公立・私立大の医学部医学科には68人が合格している。
「回り道」に見える方針が、生徒も納得できる進路へ導く
吉祥女子の進学実績を見ると、文系や理系のほか、芸術系に進む生徒も一定数いる。芸術教育には古くから注力しており、美大・音大受験に対応できる教員も多数いることから、中学時代からハイレベルな授業を受けることができる。宝塚歌劇団の団員を養成する宝塚音楽学校は狭き門として知られるが、数年に1度、定期的に同音楽学校への合格者も出るそうだ。広報部副部長で家庭科担当の山根晶子氏は、生徒からこんな話を聞いたことがある。
「卒業生が中高時代を振り返って、『私はオタクだけど、みんなが認めてくれてとても居心地がよかった』と話してくれました。そういえば本校では漫画研究部なども人気ですが、『吉祥女子はオタクに優しい学校として、実はかいわいでは有名なんですよ』なんて言うので驚いてしまいました」

例えば読書好きの生徒なら、充実した図書館に置かれる書評コーナーで表現力を発揮することもできる。