勉強嫌いな子どもにも「学ぶ面白さ」がわかる「ゲームを通した学び」の可能性 学習ゲームの限界超えるGBLは実現できるか
そこでゲームでは「辛」と「口」のマナカードを組み合わせて「言」のモンスターカードを獲得することに成功した場合、じゃんけんに勝てば、相手の山札を6枚減らせるが、負けたときには「神への誓いを破った」と見なされ、自分の山札を1枚減らさなくてはいけないルールとなっている。
ただしプレーヤー自身は、こうした漢字の成り立ちを意識することなく、純粋にゲームに集中することができる。カードの中に原子や分子の特徴が書かれていた「アトムモンスターズ」とは違って、「カンジモンスターズ」のカードには、それぞれ漢字の成り立ちや意味についての記述はとくにない。
子どもたちには、ゲームはゲームとして楽しんでもらう。そのうえで同社では、子ども向けの人気マンガ雑誌『コロコロイチバン!』(小学館)と連携して、22年12月(2月号)より漢字をテーマとしたマンガの連載を予定している。そして「カンジモンスターズ」の中に登場する漢字の由来や意味についての解説は、そのマンガ作品のほうで展開していく。つまりゲーム会社がよく用いるメディアミックス戦略を「カンジモンスターズ」では採用することにしたわけだ。
「ポケモンカードがそうであるように、まず子どもたちはカードに描かれているキャラクターに愛着を抱くものです。すると、そのキャラクターについてもっと知りたくなり、一緒に遊んでいる友達にも教えたくなる。そこで連載のマンガを読み、漢字についての知識を得るとともに、漢字の奥深さや面白さを学んでいくという仕掛けにしました。さらには『カンジモンスターズ』に登場する以外の漢字にも興味を持った子どものために、いずれは『漢字図鑑』の制作も行いたいと考えています」
森本氏が目指しているのは、漢字にせよ、原子や化合物にせよ、「世界を構成している物事について学ぶのは楽しい」「世界を知るのは面白い」ということを、ゲームを通じて、できるだけたくさんの子どもに伝えることだ。
「最近、教育界では、社会的課題を解決できる人材の育成といったことがよく言われます。けれども、そもそも子どもたちが『自分が生きている世界はすばらしい。守るに値する』ということを実感できていなければ、『SDGsなんて自分には関係ない』ということになってしまいます。だから、まだこの世界に一歩を踏み出したばかりの子どもたちには、まずこの世界の楽しさを知ってほしい。その順番は間違ってはいけないと思っています」
実際に学校を訪れて、子どもたちにゲームを取り入れた授業を行ったりもしている森本氏は、「学校の休み時間に遊んでもらえるようになれたら」とも話す。純粋にゲームに熱中してもらって、ゲームを入り口としてさまざまなことに疑問を持ち、深掘りをし、それが学問へとつながる。そのための挑戦を森本氏は続けている。
(文:長谷川敦、撮影:今井康一)
東洋経済education × ICT編集部
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