「台湾有事」は本当にあるのか、講演会に参加した「日本の高校生」が得た視点とは? 台湾人研究者に聞く「情報リテラシーの重要性」
その一例として、中国と台湾は対立しているかのように見えるが、水面下では協力している部分もあることを劉氏が指摘した。例えば、台湾の人が中国で事故などに遭い、そのための救援などの協力を中国側に要請するといったことがある。表面上は中国は台湾からのそのような要請に無反応であることもしばしばだが、実際には台湾の人のために働いて解決に導いている事例があることを紹介。中国と台湾は対立ばかりしているのではなく、実はそういった関係もあるのだと劉氏は紹介した。
情報リテラシーの重要性を再認識した高校生
台湾の専門家からの話を聞いて、講演会に参加した生徒たちはどう考えたか。
山形南高校2年で台湾の大学進学に関心を持つ真木嵩大さんをはじめ参加した生徒たちは誰もが、講演会を前に「台湾有事」とはどういうことなのかと調べ、ネットを中心に事前学習を踏まえたうえで参加した。
真木さんは「台湾有事は起こるものだという内容の情報が多かったが、劉先生の『近い将来において中国による台湾への軍事侵攻はない』と結論づけたのに驚いた」と語る。「劉先生が示した根拠は、台湾と中国との政治的な歴史だけでなく、産業や地理的要因、世界における中台の立場などさまざまな面に及び、またそれをわかりやすく解説されたので説得力があった」と続け、有益な話を聞けたことがうかがえた。
台湾の大学への進学を希望している済々黌高校3年の西田梨音さんは、「台湾と中国は争いばかりではなく、実は助け合いもしているという話が印象的だった。戦うこと、武力以外でもこの問題を解決できる手段があるのではないかと感じた」と述べた。
また同校2年の松崎伊吹さんは台湾について事前学習をしたことを踏まえ、「ネットにある情報は、事実を知らずに書かれたものやネガティブな面をことさら誇張されている記事もあると感じた」とし、「片方の情報だけを聞いて一喜一憂するのではなく、知識を深めて自分自身で情報を判別していきたい」と話した。
さらに同高校3年の藤本和夏菜さんは、「真偽を含めいろんな情報があふれている今の社会で生きる私たちにとって、情報リテラシーを身に付けることがとても大切であり、そのためにもたくさん見て、聞いて、考えて情報収集や観察をしていこうと思う」と述べた。
親日的で日本人が留学しやすい台湾だが、台湾を取り巻く国際情勢は今後も複雑化するのは間違いない。留学も視野に世界に関心を持つ生徒たちにとって、台湾の専門家の見方や解説を聞く機会を提供する今回の試みは、とても有益なものだったことだろう。
(文:福田恵介、注記のない写真:Andreanicolini / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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