「台湾有事」は本当にあるのか、講演会に参加した「日本の高校生」が得た視点とは? 台湾人研究者に聞く「情報リテラシーの重要性」
そして劉氏は、「台湾有事は起きないと言ったが、距離の置き方を間違えて偶発的な衝突から有事に発展する可能性がある」と指摘し、双方とも、より注意深く行動すべきだと付け加えた。
「中国人民解放軍にとって、台湾は地理的に攻撃しにくい存在とのことだが、実際に台湾はどのような準備をしているのか」(山形南高校の生徒)
劉氏は「侵略されないように、また侵略されたときにも有効な手段を打てるように最先端技術を利用しながら準備している」と答えた。また、「台湾は中国に対抗できるミサイルも多数開発しており、最近では潜水艦の建造も行っている。同時に、台湾だけの軍事力ではかなり厳しい状況になるのはわかっているので、日米をはじめとする国際社会からの協力などが有効に働くよう、つねに用意をしている」と説明した。
劉氏は講演の中で、米国が制定した「台湾関係法」と、今、米国上院外交委員会で審議されて可決された「台湾政策法案」についても説明した。台湾関係法は1979年に米国が中国と国交を結び、台湾(中華民国)と断交した際に、台湾の安全保障のために制定した法律だ。米国は台湾を国家と同様に扱い、防衛兵器を供与できることを定めている。
また台湾政策法案は2022年9月14日に米国上院外交委員会で可決された法案で、中国と台湾の安定した両岸関係の維持を目的に、米国が台湾政策をより強化するために出されたものだ。そこで生徒から、次のような質問も出た。
「台湾政策法案は成立するのか。また、一つの中国、台湾は中国の一部とよく聞くが、これらの法律とどのような関係があるのか」(済々黌高校の生徒)
劉氏は「台湾関係法は、あくまでも中国は一つということを念頭において制定されたもの。中国側の『中国は一つ』という主張には同意しないが、台湾も中国であると制定時の状況を考えて制定された」と説明した。
ただし、今回米国上院外交委員会で可決された台湾政策法案は、①米国への事実上の大使館の設置など台湾を国として認めるように読み取れる内容であること、②台湾は米国の軍事的同盟国として扱うという表現があり、台湾を国家として認めるような内容になっていること、③米国は台湾に対し65億ドル相当の軍事援助を行う内容があることを挙げて、2つの法律の違いを示した。
ただ、台湾政策法案は議会を通過したものの、バイデン大統領が署名するかどうかは不透明で、成立は難しいのではないかと劉氏は生徒たちに答えた。
台湾有事など国際情勢にはさまざまな情報が飛び交う。高校生たちはどの情報が正しくて、どれがフェイクニュースなのかといった、「情報の真偽の見極め」に悩んでいるようだ。
「正しい情報がどれか、どう見極めるのか。その方法があれば教えてほしい」(済々黌高校の生徒)
劉氏は、ネット上には本当に情報があふれていて、そのような質問をするのはとても理解できると述べたうえで、アドバイスとして「1つの事象にポジティブな見方とネガティブな見方があるのなら、両方聞いて自分で考えてみること」を勧める。結局は自分が観察して考えたうえで判断するしかないので、そのためにはたくさん話を聞いて、自らの考えを踏まえながらどれが本物かを見極めるしかないとアドバイスした。