マレーシアで、あえて学校に行かない「ホームスクーリング」が支持される理由 「不登校」に希望を与える、前向きな自学の勧め

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Vihart」より。こちらのサイトでは身近なものを使って、数学に興味を持たせるようにしている

書き出すとキリがありませんが、従来の「黒板の前での先生の講義」に慣れた身からすると、アニメーションを駆使したYouTube動画は隔世の感があります。

「正解が1つではない世界」を受け入れられるか?

日本でもホームスクーリングが少しずつ認知されてきました。同時に、不登校は問題行動ではないとの見解も示され、フリースクールなども増えてきているようですが、おおたとしまささんの『不登校でも学べる』(集英社新書)によると、2022年現在で、まだまだ市民権を得るところまでは行っていないようです。

ホームスクールあるいはホームエデュケーションという言葉を聞いたことがあるでしょうか。家庭を拠点とした教育を行うことです。海外では正式な教育として認められている場合も多いようですが、日本ではまだまだ特殊なものだと思われており、情報も手に入りにくい。
〜『不登校でも学べる』(おおたとしまさ・集英社新書)より引用〜

本書にはさまざまなフリースクール、オルタナティブスクールの実例が出てきます。今後、ホームスクーリングの認知度が上がり、選択肢が増えていけば、子どもたちの可能性はさらに広がり、親たちの負担や心配も減っていくのではないでしょうか。では、そのためには何が必要なのでしょうか? 

まず挙げられる問題点は、日本語におけるYouTubeのオンライン教育コンテンツが、英語圏に比べるとまだ少ないということです。ただこれは、日本語で展開する教育YouTuberが増えるか、日本の子どもたちの英語力が上がり、英語のオンライン教育コンテンツをそのまま楽しめるようになると、自然に解決する問題でしょう。

むしろそれよりも問題なのは、何世代にもわたって染み付いた「偏差値のない世界」「正解は1つではない世界」を人々が受け入れられるかではないでしょうか。前回の記事でも書きましたが、私たちが受けてきた教育「唯一の正解に向かって最短ルートを進む教育」への信仰を変えることは、なかなか一朝一夕には難しいことです。

「正解は1つ」という教育を受けた世代は、「学校とホームスクーリング、勝ち組・負け組があるに違いない」と優劣をつけてしまうかもしれません。それだけ「正解があるはず」「正解は1つ」という教育の呪いは強力なのです。しかし、これからの世界を生きていく子どもたちには、「ただ1つ」の正解はありません。「あれも正解、これも正解、どれも正解」という世界を生きていくのです。その子どもたちに必要な教育とはなにか。今こそ、大人たちが真剣に再考するべきではないでしょうか。

野本響子(のもと・きょうこ)
東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリーの編集者、文筆家。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、マレーシアに教育移住。東南アジア発の生き方・教育・ビジネス情報を発信中。著書に『子どもが教育を選ぶ時代へ』『日本人は「やめる練習」がたりてない』(ともに集英社)、『マレーシアにきて8年で子どもはどう変わったか』 (サウスイーストプレス)、『いいね! フェイスブック』(朝日新聞出版)ほか

(注記のない写真:h9images / PIXTA)

執筆:野本響子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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