マレーシアで、あえて学校に行かない「ホームスクーリング」が支持される理由 「不登校」に希望を与える、前向きな自学の勧め

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モンテッソーリ式のホームスクール。一見すると日本の「学童クラブ」のような印象だ
(画像:野本氏提供)

ホームスクーリングで学ぶ子どもを、「ホームスクーラー」と呼びますが、マレーシアでホームスクーラーが増えている理由は大きく3つあります。

1. 学校での学びに満足できない子どもの増加

1つ目は、従来の学校での学びに満足できない人が増えていること。とくに、自分で強く学びたいと思う気持ちを持った子は、学校に強制される学びを好まないことがあります。そのような子どもに先生がすべきことは、「授業をすること」ではなく、「その子の学びを邪魔しないこと」なのです。また試験だけに集中したいという子ども向けのスクールもあるようです。

2022年3月にFree Malaysia Todayが「ホームスクーリングで子どもの可能性を引き出す」という記事で、増えるホームスクーリングの背景について取材をしています。その記事を意訳しつつ抜粋します。

「試験でオールAを取ること」を強調しすぎると、新しいことを学んだり、発見したりする熱意が破壊されてしまう。優秀であろうと努力することが、ときに可能性を完全に阻害してしまうのです。
したがって、ますます多くの親が従来の学校教育システムから脱退し、代わりに子供たちをホームスクーリングで学ぶことを好むのは驚くべきことではありません.
一部の親は、子どもたちを自宅で教えるか、「ケンブリッジ IGCSE カリキュラム」(英国式の中等教育卒業資格)などの特定のシラバスに沿った学習センターに子どもを送り、より構造化された学習アプローチを好みます。
〜Free Malaysia Todayより筆者意訳〜

記事の中で紹介されている、セリーナ・チェウ氏は、2010年より二人の子どもをホームスクーラーとして育てていると語ります。ホームスクーリングを選択した理由について、夫婦で子ども向けのワークショップを20年続ける中で、「学業が優れているのに、自信がなく公共の場で話せない人々の存在に気づいたこと」を挙げています。そして、伝説的なTEDプレゼンターである、ケン・ロビンソン卿の本「The Element: How Finding Your Passion Changes Everything(エレメント:あなたの情熱を見つけることがすべてを変える方法)」など、子育てと教育について書かれた本を多く読み、ホームスクーラーとして子どもを育てることにしたそうです。セリーナ・チェウ氏は、こう続けました。

「子どもたちが興味を持っていることを見つけて、そこから自信をつけていくほうがよいと考えました」

子どもの多様な興味に対応できるのもホームスクールの特徴だ。(左)米国式のホームスクール。ここでは大工の仕事を教えており、木製の家具はすべて子どもたちが作っている(右)STEMホームスクールで先生が算数を教えているところ
(画像:野本氏提供)

実は私の長男も、中学のときに自分のペースで学びたいと言い、学校を辞めて、小規模なSTEMホームスクールに移り、そこで仲間たちと共に、ほぼ自学で「ケンブリッジ IGCSE カリキュラム(IGCSE)」を取得しました。IGCSEは、英国式の中等教育終了試験です。英国式では学校卒業にあたって試験が必要になり、英国式インターに通う子どもはもちろん、全員がこの試験を受験し、合格することによってのみ、進学が可能になります。この試験は、「ブリティッシュ・カウンシル」に申し込むことで、ホームスクーリングで学ぶ個人でも受けることが可能なのです。

長男は、IGCSE取得後、「文系科目にも学びの幅を広げたい」と言い、再び学校に戻りました。両方体験してみて、ホームスクーリングは自分のペースで学べるものの、人間関係が作りにくい、学校は人間関係が作りやすいが、自分のペースで学びにくいと言っています。

2. ホームスクールの費用が安いこと

2つ目の理由として、多くの場合、無認可の教育機関であるホームスクールで学ぶ費用がインターなどに比べて安いこと。一般的な通学型のホームスクールは、ビルの一室などを使用しており、大規模な施設を擁する学校に比べて維持費用などがかからないため、学費が格段に安くなるケースが多いのです。

シンガポールに本拠地を置くOCBC銀行の記事によれば、ホームスクーリングを選択する親が1ヵ月にかける教育費は、およそ月額 400マレーシアリンギット(日本円で約1万2000円) から 3000マレーシアリンギット(日本円で約9万円)の範囲です。これは、子どもを私立の学習センターやホームスクーリングセンターに通わせた場合であり、このうちの一部のスクールではケンブリッジなどの国際的なカリキュラムに従い、学生は自分で国家試験を受けることを選択できます。

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