「親子でマレーシアに教育移住」して見えた、日本の課題と求められる力とは? 日本の子どもが「自ら教育を選ぶ日」は来るのか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

情報を吟味して評価する力は、「クリティカルシンキング」と呼ばれます。例えば、マレーシアのある学校の英語の授業では、BBCやニューヨークタイムズなど、世界のニュースを題材に、どの程度信頼できるか、チェックをするような課題が出ます。記事を書いた人は、どの程度の経歴のある人で、何のために書いたニュースなのか。取材の資金は誰が出しているのか。その記事による利害関係者は誰か。読者を誘導するような、感情的な表現はないか、誤謬がないか、生徒たちが調べるのです。

こういうことを教えないと、ネットで極端な意見に触れて「一部の情報を見てパッと正邪を判断する人間たち」になってしまうからです。

分断されていく「21世紀型教育」

新たに主流となりつつある「21世紀型教育」ですが、実際、マレーシアではどのように受け入れられているのでしょうか。実はこの「21世紀型教育」は、日本の「ゆとり教育」と同様に多くのマレーシアの親に評判が悪いのです。その理由として、アジアの教育熱心な親たちは、どうしても自分が受けてきた教育――「先生が教えなければ」「ドリルや教科書がなければ」という思い込みから抜けられないことが挙げられます。これらはインターナショナルスクールの先生からも頻繁に聞く話です。

また、「21世紀型教育」では、先生自身が学び直さなければいけないという人もいますが、実際に学び直すことができる教師は一握りでしょう。

ですから、マレーシアにおいても一見「21世紀型教育」を取り入れているように見えながら、実際のところは教科書中心の授業を行っている、いわゆる「揺り戻し」が起きている学校も数多く存在しているのです。このようなインターナショナルスクールはアジアの親に人気があるので「アジア的インター」などと呼ばれたりします。

また、「21世紀型教育」は「プロイセン型教育」とは違い、さまざまなアプローチがあります。例えば「国際バカロレア」のように綿密に学習計画がプログラムされたものから、もはや「教師すら要らない。子どもが勝手に学べばよい」という考え方もあります。

そのため、子どもには感覚的に理解できても、実は先生や親が理解するのは難しい――という声もあります。

元マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で、元MITメディアラボ所長・伊藤穰一さんは講演で「今は子どもたちのほうが大人よりも技術をわかっているという初めての時代」と言っていました。アバンダンス(豊富さ)――要するに豊富なコンテンツがすでにある時代では、先生がいなくても図書館に行かなくても学べるのです。

そこで、冒頭のような教育の分断が起きているのです。

マレーシアでは、10年ほど前にインターナショナルスクールが急激に増えると同時に、私塾スタイルの「ホームスクール」が広がりました。一気に教育の選択肢が広がったのです。政府もその多くを追認し、比較的古い教育から、各種の宗教学校、国際バカロレア、親が望む「一見、最先端の技術は使っているが、その実は昔スタイル」の学校から、最先端の「教えない」教育まで、幅広い選択肢が共存する状態になっているのです。また、学校によっても4Cを習得させるやり方が異なっているため、100人の先生がいたら100通りの方法があるといえるほどです。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事