インフレ収束のため、利上げを急ぐアメリカのパウエルFRB議長。だが、その道ゆきには難路が待ちかまえている。
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切ってから約半年が経過した。この間、脱コロナに伴う供給制約や原油急騰などで高進したインフレに歯止めをかけるべく、政策金利は大幅に引き上げられた。しかし、インフレ収束の見通しは立っていない。
むしろ、積極的な利上げが景気後退(リセッション)を招くことへの懸念が強い。今世紀に入って3度目の利上げは「これまでで最も難度が高い」(日銀OB)とされる。過去の失敗や頓挫の汚名を返上し、見事成功に持ち込む確率は極めて低そうだ。
グリーンスパンが招いたバブル
この四半世紀近くのFRBの政策運営を振り返ると、「世界を大混乱に陥れた世紀の大失敗」(別の日銀OB)と言っていい。
2004年、グリーンスパン議長(当時)が率いるFRBは、景気の急回復を受けて利上げ過程に入った。アメリカ経済は2000年の情報技術(IT)バブルの崩壊で低迷したが、FRBの利下げが奏功。住宅市場を中心に急速に持ち直し、「金融政策のマエストロ(巨匠)」とも称されたグリーンスパン議長の舵取りが見事に成功したように見えた。
だが、小刻みに計ったかのように金利を引き上げる「メジャードペース」と言われた手法は、住宅市場の過熱化を防ぐには引き締めペースが遅く、結果的に壮大な住宅バブルを招いた。
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