売れない時代にモノが売れるファン作りの極意 新規の取り合いは苛烈極めるレッドオーシャン
さとなお: このお店には、絶妙に辛いラーメンを提供したいというメインコンセプトが元々あったと思います。そして、そのコンセプトに共感するファンができていた。だからそのまま、その味や考え方を好きになってくれた2割のファンを大切にし、その味を守っていったほうがよかった。そしてそのファンたちをもっと喜ばせるサービスなどをしていくと、ファンが友人とかに勧めてくれたり連れてきてくれたりするんです。間口を広げるか、コアなファンを大事にするか……。確かに、そのあたりの見極めは難しいです。でも、これからは後者を選択する時代だと思っています。
和田: 理由の最後の「類友」って、さとなおさんがよく言われている「口コミ」のことですか?
さとなお: はい、類は友を呼ぶ、の「類友」ですね。つまり同類のような友人ということです。口コミって昔からよく効くと言われてきているけど、それが、今ほど効く時代はないんです。ちゃんとデータでも出ています(下の図)。一番信頼できる情報源は家族や友人なんです。コロナ禍を経て、ファンがついているお店や商品は強いって、みんなが実感したんじゃないですかね?
あれはファンが通ってくれるうえに、周りに口コミしてくれたりするからなんです。情報や商品が過剰に多いこの時代、みんな「家族や友人」からのお勧めを頼りにしています。
和田: でも、なんで情報通でもない、目利きでもない家族や友人が信頼されるんですか?
さとなお: それは、家族や友人は価値観が近い人だからです。価値観が近い家族や友人が愛用しているモノや大好きなコトは自分も気に入る可能性が高いですよね。和田さんもそうじゃないですか? 検索しても何を選んでいいかわからないし、広告も信用できない。そんな時代、価値観の近い友人(類友)が愛用しているものを勧められたりしたら、興味も湧くし買っちゃったりもしませんか?
和田: わかります! 価値観の近い人たちとはやっぱり使っているものも好きなものも似ています。共感だらけです。
さとなお: 人は同じ属性の相手に親近感を持ちやすいんですね。専門的にはホモフィリー(Homophily=同じような属性や価値観を持つ人とつながろうとする人間の傾向のこと。ソーシャルネットワーク研究の基本的な考えの1つで、同質性とも呼ばれています。)と言ったりします。「類は友を呼ぶ」「似たもの同士」っていうことですね。つまり「類友」です。情報も商品も過剰に多い今の時代、何を選んでいいか本当にわからないから、人は類友の選択を羅針盤にして商品などを選ぶんです。そのうえ、その類友が何かのファンだったら、ファンからの言葉は熱意を伴うので、より多くの影響を与えますよね。
ファンを大切にしたうえで新規獲得を
さとなお: もちろん、2割のファンの方たちだけを守っていけばいいという話ではないです。ただ、新規獲得ばかりに目がいってしまい、もともとのファンの方たちをないがしろにするのは、この時代的に本末転倒だと思いますし、ファンこそが新規を連れてきてくれるので、ファンを大切にすることこそが本筋だと思いますよ。ファンを大切にした上で、新規に目を向けられたらいいのではないでしょうか。
和田: 「とにかく新規!」「売上目標まであと○人!」ではないということですね。
さとなお: 「時代」のところでも述べたように、これから先、どんどんマーケットは縮むし高齢者は増えるし需要も減るんです。新規の取り合いは苛烈を極めると思いますよ。
和田: 企業側も「今月の目標、新規○人」みたいな姿勢はもうやめたほうがいいですね。
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