「中央線特急」なぜ東京でなく新宿発ばかりなのか 各停も東京駅に入らない、実は「不思議」な路線

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中央線の前身となった甲武鉄道は、新宿から都心に乗り入れるというかたちで路線網を延ばしていった。その際にターミナルとなったのは飯田町。この時代は蒸気機関車だった。その後、電化され、中野―飯田町間は電車、長距離列車は全線で蒸気機関車と分けられた。電車線は飯田町から万世橋へと進み、さらに延伸して東京へと至る。こうして、長距離列車のターミナルは飯田町、電車のターミナルは東京となった。

その後、飯田町から長距離列車のターミナルが新宿へと移った。飯田町駅は貨物駅になる。ここで、現在と同じ長距離列車は新宿、通勤電車は東京というターミナルの分業が完成した。

現在は、新宿発の長距離列車は特急列車のみとなっているものの、以前は甲府・松本方面への普通列車も運行されていた。使用車両も、長距離普通列車は客車や近郊型電車、中央線区間内の電車は通勤型電車と、しっかりと区分けがなされていた。

東京駅発の特急はいつ登場したか

本項の冒頭でも記したとおり、中央本線の特急列車の一部は東京から発車するが、これは、比較的最近のことである。

1986(昭和61)年11月のダイヤ改正で、東京・千葉を発着とする「あずさ」が登場。1988(昭和63)年3月に甲府発着の「あずさ」の列車名を変え、特急「かいじ」が誕生した。だがいまでも、東京発着の特急列車は多いとはいえない。

国鉄色189系「かいじ」
かつての特急「かいじ」(写真:sou/PIXTA)

理由としては、新宿のホームが快速は上り1面2線、下り1面2線を使用でき、さらにそのあいだに独立した特急発着ホームが1面2線であるという構造なのに対し、東京では上り下りあわせて(特急も含め)1面2線で対応しなくてはならないという現状があるからだ。特急列車がホームに着き、折り返しのための整備を行い、それから発車するということが、東京駅の設備では困難なのだ。

いっぽう、新宿には引き上げ線もあり、ホーム上で折り返しの整備をするための時間的余裕も場所も確保されている。東京発の特急は、事前に新宿で整備されたあとに、回送されてやってくる。東京着の特急は、乗客を降ろしたあとに回送される。

このように、中央本線における新宿と、中央線における東京とではターミナルの性質が異なっている。それゆえに特急のほとんどが新宿発着になっているのだ。

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