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なぜ日本の物流業界は「社会的地位」が低いのか 経済・社会のあらゆるところで軽視されている

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有力機関による調査・研究リポートからビジネスに役立つ逸品をえりすぐり、そのエッセンスを紹介。

「物流」の社会的地位が低い背景
大学でも企業でも軽視されている

・サカタウエアハウス ロジスティクス・レビュー「なぜ日本では物流の地位が低いのか」(2022年6月9日)

・サプライチェーン・ロジスティクス研究所 代表社員 久保田精一

ドライバー不足やデジタル化の遅れなどで、輸送力が低下している日本の物流。解決策はあるか(写真:PIXTA)

日本の物流は、輸送の非効率、人手不足、物流インフラの脆弱さなど、多くの問題を抱えている。本リポートは、その背景にある「物流軽視」の現状と解決策について述べる。

物流軽視は経済・社会全体で広く観察される。大学では、物流専攻の学科・コースも、物流専任の教員も非常に少ない。荷主企業では「物流職」としての採用はほとんどなく、物流担当の役員も少ない。物流機能はアウトソーシングされ、管理機能も物流子会社として外部化される。物流行政には、インフラ、都市計画、労働安全衛生など幅広い行政機関の調整が必要だが、現状は課題が多い。

物流軽視の背景には、①物流のマネジメントが専門の職能として未確立②ゼネラリスト人材を重用する傾向が物流の専門職能の確立を阻害③融合領域・業際領域への評価の低さ④問題解決へのインセンティブの低さと応用技術の軽視、などがある。

これらの課題は高度物流人材の育成だけでは解決できない。物流人材の専門性を評価するシステムの整備や、高度な専門性を持つ物流人材によるマネジメントが企業価値を高めるという「物流ガバナンス」視点の定着も、物流の地位向上には必要だ。

円安でも輸出が増えなくなった訳
景気押し上げ効果は期待できない

・JA共済総合研究所『共済総研レポート』No.181「なぜ円安でも輸出が増えないのか?」(2022年6月)

・JA共済総合研究所 専門研究員 古金義洋

歴史的なレベルの円安が続いている。2022年2月の実質実効レートは、1972年以来の低水準となった。しかし日本の実質輸出・輸出数量はさほど増加していない。

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