コロナ禍で加速する貧困、不登校、虐待「10代の孤立」救うNPOの奮闘とは? 「自己責任」の言葉に潜む、無関心という放置

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実際、D×Pでは多くの学校と連携している。NPOと積極的に活用し、実例をつくっていくことで、長期的かつ楽に支援できるようになるのではないかと今井さんは語った。

一方、オンライン事業では10代の進路・就職相談の窓口として「ユキサキチャット」をLINEで展開している。そのほか、コロナ禍で新たに開始した現金給付や食糧支援は、経済的に保護者に頼ることが難しい15〜25歳を対象に「ユキサキ支援パック」として提供している。

現金給付では、緊急の場合は一括8万円給付、あるいは1万円ずつを3カ月など、個人の事情に合わせて速やかに支給し、生活費、家賃、学費の支払いや、ライフラインの滞納の解消などに充ててもらっている。食糧支援ではパスタセットやレトルトカレー、缶詰、コメなど約30食を提供。さらに相談者の多くは日用品も我慢していることが多いため、マスクや生理用品、ボディーソープなど必要なものを選択式のフォームで尋ね、希望があったものを届けている。今井氏はコロナ禍における両事業の状況を次のように語る。

ユキサキ支援パックは、約30食分をすぐに発送。また、一人ひとりの事情に合わせて必要な日用品も送る
(写真:D×P 提供)

「オフライン事業については、20年に全国の学校が休校になったこともあり、思うように活動ができませんでした。しかし、学校側も事業の開催を望むところが多く、20年6月からは2校で居場所事業を再開しました。オンライン事業についても、ニーズが高まっており相談件数が急増しています。その内容も、相談だけでは間に合わなくなってきたため、現金給付と食糧支援という直接サポートする事業を始めることになりました。相談に来る10代の3割弱〜4割が、ガスなどのライフラインを止められていたり、1日1食しか食べていないというような現状があります。そのうち6割は現金給付や食糧支援で改善していきますが、残りの4割は、対面支援や長期支援が必要なので、オフライン、オンラインと区切ることなく、両面の支援を続けていくことが必要です」

男女比で見ると、相談してくる7割強は女性で、現金給付や食糧支援についても女性の比率が高くなっているそうだ。今井氏はこう続けた。

「女性の相談が多くなった理由としては、女性が多く就業している接客業など、非正規雇用の仕事がコロナ禍で大きな影響を受けたためではないかと考えています。今後は街中で食糧支援や相談を行うことも検討中です。いずれも行政機関と連携を取りながら進めており、賛同いただける自治体とは独自に協定を結び、連携を強化しています」

例えば、徳島市とは協定を結んでおり、行政の窓口などでユキサキチャットの告知をしてもらっているそうだ。ほかにも、大分県のあるコンビニでは、ユキサキチャットのカードやポスターを設置してもらっているという。

セーフティーネットから抜け落ちやすい10代

今や「10代の孤立」は大きな社会的課題となっていることは間違いない。行政の力だけでは解決できていないのも事実だろう。今後、支援のスピードを上げていくためにも、やはり官民が一緒になって支援する仕組みづくりが不可欠だ。D×Pでもさまざまな団体や人的ネットワークを利用しながら支援に当たっており、これからは各方面と、さらに連携を深め、課題解決の事例を増やしていきたいという。

また、22年度は長期間サポートできる寄付体制をつくり、150名の困窮した10代に最大1年間の食糧支援を実施するための月額寄付サポーターの募集も開始したそうだ。「ぜひ、D×Pと一緒に孤立する10代へのサポートを考えてほしい」と今井さんは語る。最後に、今井氏はD×Pの支援事業にかける思いをこう語った。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事