コロナ禍で加速する貧困、不登校、虐待「10代の孤立」救うNPOの奮闘とは? 「自己責任」の言葉に潜む、無関心という放置

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「行政の窓口は電話対応が中心ですから、チャットを好む今の10代にはハードルが高い。私たちの相談窓口には、親に頼れない子どもたちからの相談が最も多く、中でもコロナ禍でアルバイトができず、日々の生活がままならなくなっている子どもが多いのです。1日1食しか食べられない、所持金がないという子どもも少なくなく、相談してくる段階で借金の返済を滞納している10代が6割にも上ります。現在、アルバイトの状況は改善してきているのですが、コロナ禍によるここ2年ほどのダメージは大きく、最近のインフレや物価の上昇も相まって、じわじわと生活に影響が広がってきています」

10代の若者にとっては、電話よりチャットのほうが相談しやすいのだという
(写真:D×P 提供)

オフライン、オンラインの両面から支える取り組み

これまでD×Pでは、孤独な状況に陥りやすい通信制や定時制高等学校の生徒を主な対象として、オフラインとオンラインの両面から支援活動を展開してきた。まずはオフライン事業の取り組みから見ていこう。

1つ目は「クレッシェンド」という通信制・定時制高校の中に“つながる場”をつくるというプログラムだ。これは高校生とD×Pのボランティアである「コンポーザー」が対話する全4回の授業を高校内で行うもので、生徒一人ひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくり出すことが目的となっている。

2つ目は、週1回、生徒たちが安心できる居心地のよい空間を通信制・定時制高校の中につくる「居場所事業」だ。内容はコンポーザー、地域の住民、他団体のスタッフなどが学校を訪れ、生徒が定期的にさまざまな人たちとつながれる場所を提供する。そこでは、生徒との会話から困り事を拾ってサポートにつなげ、生徒が卒業した後も社会の中に居場所がある状態をつくることを目指している。

3つ目が、生徒一人ひとりの希望や状態に合わせた職場見学や仕事体験ができる「仕事体験ツアー」。自分の生き方についての考えや仕事に対する理解を深め、生徒自身が納得できる進路を選べるようにすることが目的だ。

親でも先生でもない大人と関わり、多様な考え方に触れられる「クレッシェンド」(左)。学校内に設置されたカフェ。「居場所事業」では、定期的にサポートとつながることができる(中)。「仕事体験ツアー」で、未来の希望へつながる道をつくっていく(右)
(写真:D×P 提供)

D×Pでは「クレッシェンド」や「居場所事業」で生徒の希望を聞き、その生徒に合った仕事を「仕事体験ツアー」で体験するという支援の流れをつくっている。

「通信制や定時制の高校では、貧困や不登校に苦しんでいる生徒が多く、先生だけではサポートしきれない部分を私たちが支援しています。生徒の中には、そもそも先生とは話しにくいという子どもたちもいて、学校だけでは解決できない問題もあるのが実情です。今後は私たちだけでなく、多くの団体や組織を巻き込み、さまざまな問題を抱え悩んでいる生徒だけではなく、対応に苦慮し、悩んでおられる先生たちも孤立させないように、学校全体を支援する形にするのが、よりベターだと考えています」

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