横浜市・山内小学校校長が語る「不登校」公立で受け皿つくる意義とは? 「校内フリースクール」学校はどう変わったか
横浜市では市内すべての小学校に、学習支援などの取り出し指導を行う「特別支援教室」の設置を徹底してきた。山内小学校でも特別支援教室を設置していたが、それに加え、佐藤先生は校内フリースクールを設けることにしたのだ。
「山内小の取り組みを声高に言うつもりはありません。ほかの学校でも“保健室登校”といわれるものがありますから。ただ、私たちの学校では保健室以外に専用の部屋を持ち、常駐の先生をつけていることが特徴だといえるかもしれません。従来の取り出し指導と校内フリースクールを合わせた体制で、不登校の子どもの支援に取り組むことにしたのです」

この校内フリースクールは常時開設されており、対応は児童支援専任の教員が中心となる。ほかに特別支援教室担当、サポートの非常勤を含め計4名、また、特別教育支援登録をしている学生など支援員8名がおり、日替わりで1日当たり1~2名で不登校児に対応する。
「山内小の校内フリースクールは、家でもなく、教室でもない、その真ん中にある存在だといえるでしょう。ただ、イメージとしては“安住の地”であるが、“永住の地”ではないということです。最終的には通常の教室に戻ってほしい。ここでは自信をなくした子どもに、安心できる場所を提供する。そして、次の一歩を踏み出させるために、“自己選択と自己決定”ができるように主体性と自己肯定感を高める指導を行っています。山内小では取り出し指導と校内フリースクールを同じ部屋の前後に設置し、連携して指導していくことで、不登校の子どもに自信をつけさせ、通常の教室へ送り出すことを目的としているのです」
同校の校内フリースクールは、ほかのフリースクールと異なり、在籍する学校とのつながりを子どもが持ち続けることで、学校に足を運び続けられるように促し、通常の教室に戻すことに主眼を置く。現在は全学年で5~6人の児童たちが学んでいる。中には、この校内フリースクールに通うために、他校から転校してきた児童もいるそうだ。こうした校内フリースクールの取り組みについては、市内外の学校や保護者からの問い合わせも少なくなく、校内に受け皿があるということで、子どもにとっても、保護者にとっても、安心だという声が多いという。
「校内フリースクールの児童は昼から登校したり、45分の活動時間を20分に短縮して、あとはゆっくりするなど、さまざまです。最近では、自分で時間割を見て、校内フリースクールの教室からオンラインで通常の教室の授業を受ける子どもも出てきています。こうした取り組みの結果、もちろん個人差はありますが、毎日、校内フリースクールに通っていた子どもが半年ほどで通常の教室に復帰するといった成果も生まれています」
「やれない理由は、本当はないはず」
実は、佐藤先生の学校改革への取り組みはこれだけにとどまらない。共通言語である“あったかハート”の傘の下で、さまざまな改革に取り組んでいるのだ。例えば、「Yぷらす」という地域学校協働本部を設置している。「Yぷらす」は、「共育・共創の学校=山内小学校」の実現に向け、保護者や地域を巻き込んで組織されている教育支援ネットワークだ。ここでは、サポーターを募集。それぞれの得意分野を生かしたサポーターとして登録し、通学の見守りをはじめ、週末には、親子スナックゴルフ大会やiPad活用講座を実施するなど、地域や企業がボランティアとなって教育支援を行っている。