アメリカ「マスク撤廃」で巻き起こっている大論争 「感染の恐怖」から旅行を取りやめる人も

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただ、公衆衛生当局者の多くは、新規感染は再び増加傾向に入ったとして警鐘を鳴らしている。

取材からは、高齢者や免疫に問題を抱えている人、小さな子どもを持つ親、公共交通機関を利用せざるをえない低所得者層が、これまで以上の危険にさらされると懸念していることも見えてきた。

ニューヨーク州イサカの弁護士で3歳と20カ月の子どもを持つキャサリン・マスキンは「孤立させられている」と話した。航空会社のマスク着用義務撤廃で、フロリダへの休暇旅行という夫との計画の望みが断たれたという。「私たちは私たちの(感染予防)ルールを持ち、それを守っている。そういう私たちが今では例外とされてしまったのです」。

マスク着用義務を無効とする判決は、パンデミックに一部で明るいニュースが見られる中で下された。年明け頃からアメリカ全土で猛威を振るってきたオミクロン株だが、足元の新規感染者数は大きく減少している。

入院者数も、信頼できるデータの収集が開始された2020年春以降のどの時点よりも少なくなっているほか、死者数もここ数週間で急速に減少。2月上旬の1日当たり2600人以上から、この1週間では1日当たり500人を下回るレベルに下がってきた。

感染増加に逆行する司法判断

とはいえ、今後については懸念材料が多く、しかも、その懸念は膨らみ続けている。

新規感染者数は少ないながらも増加傾向にある上、実際の感染者数は統計よりもずっと多いと考えられている。さらにニューヨークでは、オミクロン株の亜種「BA.2」から変異した2つの新たな亜種による感染が急速に広まっている。

新規感染の増加は東海岸と五大湖周辺で顕著だ。ミシガン州、ニューハンプシャー州、ペンシルベニア州の新規感染者数は、冬のピークに比べればかなり低いものの、この2週間で2倍以上になった。

このように感染が増加傾向にあるからこそ、今回の判決はなおさら不安視すべきものになっている、と複数の公衆衛生専門家は指摘している。

「極めて短絡的だと思う」。ハーバード大学医学部で小児科の指導を行うラクシュミー・ガナパティは、感染者数の増加を考えると「今回の判決はタイミングが悪いし、公衆衛生の原則に沿うものでもない」と話した。

(執筆:Jack Healy記者、Mitch Smith記者)

(C)2022 The New York Times 

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事