全中学校の設置目指し、岡崎市が校内フリースクール「F組」を増やす訳 長期欠席者の増加率抑制、減少傾向の学校も

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「F組は教室復帰を目指していませんが、自信がついた子は自ら在籍学級に行きます。『修学旅行の話し合いに顔を出してきます』と学級活動に参加できた子は、実際に修学旅行にも行けました。F組と在籍学級の間に“段差”がないからこその結果です」(安藤氏)

また、F組を利用するのは、長期欠席者だけではない。美川中では、外国にルーツがあって日本語の理解が心もとない生徒に対する学習支援も行っている。

「F組の生徒が率先して、日本語を教えている姿もよく見かけます。パティシエになりたいという夢を持っていたある外国籍の生徒は、通常学級の先生たちによる作文・面接対策などの指導と生徒たちのサポートがあったことで、専門学校に無事入学することができました」(安藤氏)

このような生徒たちの姿を保護者に伝えるため、定期的にF組懇談会を開催するほか、F組独自の通知表も作っている。通知表はF組で行った学習や活動内容を記述するもので、5段階評価はしない。自分を客観視することが大切なので、生徒自身が振り返りを記入できるスペースも設けているという。

成果が出ている一方で課題もある。それは理念の浸透だ。ここは、F組設置校の中でも差が出てしまうところだという。

「今後は先生方の研修も充実させるつもりです。また、F組の担任がF組のよさ、つまり個別最適な学びに軸を置いた学級運営の魅力を、通常学級の先生方に伝え切れるかどうかも大きなカギだと思っています」(小田氏)

目指すのは、F組が各学級のトップランナーになることだ。そうすれば、「すべての学級で多様性が生まれる」と小田氏は考える。「F組にも通常学級にも、発達に特性のある子がいます。理念の浸透は、本校職員や岡崎の教員にとって、そういった子どもたちの理解にもつながるはず」と安藤氏も語る。

校内フリースクールは、広島県や神奈川県横浜市などでも見られる。愛知県名古屋市も2022年度から、全110校の市立中学校のうち30校で順次「教室以外の居場所づくり」を校内で始めている。市で予算を確保し、担任を持たない「居場所」専属の教員を配置。教室復帰のみを目指すのではなく、社会的自立につながるよう支援する。「専門職も交えて支援内容を決めることを基本としつつ、各学校や各生徒の実態に応じた運用をしていきます」と名古屋市教育委員会新しい学校づくり推進室の大杉周三氏は話す。

本人の社会的自立を目指して個に寄り添う、校内における新たな不登校支援が広がり始めている。

(文:田中弘美、編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:岡崎市立美川中学校提供)

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東洋経済education × ICT編集部

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