「ワクチン接種で死者が増加」ははたして本当か 「接種後に○○人死亡」を正しく読み解くコツ
また、「老衰」「自殺」など、ワクチン接種と関係性が薄い増加要因もあります。「がん」「脳卒中」「心不全」は増えていますが、ワクチン接種がこれらの病気の死亡リスクを高めているという科学的なエビデンスはありません。
ワクチン前から死者数は増えている
図は名古屋市立大学大学院医学研究科・公衆衛生分野教授の鈴木貞夫氏が作成されたグラフです。これによると、日本では2021年1月から2021年後半まで死者数(週当たりの死亡者数)が少しずつ増えています(死者増加の一部は新型コロナ感染によるものかもしれません)。
ただし、ワクチン接種回数の軌跡をよく見ると、この増加は、ワクチン接種が始まる2021年2月17日よりも前に始まっているのです。さらに、ワクチン接種は日本では6月に入ってから1日100万回を超えるものすごい勢いで進み始めたのですが、週当たりの死者数はワクチン接種が始まった後も接種以前とほぼ同じペースで増えています。
もし、ワクチン接種で死者が増えたのであれば、接種が本格化するとともに毎週の死者数を示すグラフの軌跡が急上昇しないといけないはずです。
そもそも、超過死亡や過少死亡には、さまざまな因子が絡んできます。
たとえば、2021年では、新型コロナによる感染症対策の徹底によって肺炎やインフルエンザによる死亡者数が減少する一方で、病床逼迫で必要な治療を受けられずに死亡した人も出ました。
長期外出を控えることで運動する機会が減り、老衰が進んだ高齢者もいたでしょう。感染を恐れて健診を控えた結果、がんの発見が遅れるようなこともあるでしょう。このようにさまざまな要因が絡み合って、死亡者数は毎年不規則に変動しています。
超過死亡を注意深くモニタリングする重要性は否定しませんが、死亡原因の細かな検討をすることなしに、超過死亡の増加だけで、すべてワクチン接種が原因と結論づけるのは、論理の飛躍があります。
これまで海外の国々を含めて、新型コロナワクチン接種は感染流行を抑えることによって結果的に多くの人の命を救っています。ワクチン接種によって死亡者数が増えているというのは、事実ではありません。
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