上場企業の間に依然として残る粉飾決算。だが、真相解明のために設置される調査委員会で監査法人の責任が追及されることはほとんどない。それはなぜなのか。
上場企業の粉飾決算が依然としてはびこっている。
直近では2月28日に東証1部を上場廃止になったグレイステクノロジーの例がある。産業機械マニュアル制作の同社は、売り上げの前倒しや架空売り上げの手法を駆使し、売上高を実際よりも膨らませていた。
粉飾決算の責任は一義的にはその会社にある。しかし、不適切会計発覚時に必ずと言っていいほど設置される第三者委員会の調査によって、監査法人は不正会計をなぜ見破れなかったのかが解明されることはほとんどない。
監査法人に粉飾の責任はないのか
粉飾決算によって調査委員会を設置した、ある会社の幹部は、こういう実情に対して複雑な思いを抱いている。
「不適切な処理を生んでしまった以上、それが可能な社内体制だったことについては当然、われわれ経営陣に責任がある。それでも、不適切な処理を発見できなかったにもかかわらず、監査法人には何の責任もないのか」
グレイステクノロジーの場合、2022年1月27日に特別調査委員会の報告書が公表された。そこには、取引先を巻き込んだ架空売り上げの計上方法や、監査法人の目を欺くために経営陣が講じた数々の手口が列挙されている。
だが、報告書には監査法人がまんまとその策にはまったいきさつについては一切触れられていない。そればかりか、報告書に添付されたヒアリング対象者リストに監査法人の名がそもそもない。2月18日に新たに設置された役員責任調査委員会でも、監査法人の責任については調査対象から除外されている。
第三者委員会の調査において、報告書に監査法人を事情聴取した痕跡があるのは、ジー・スリーホールディングスやメタリアルなどごく一部にすぎない。
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