不正や不祥事の際に設置される第三者委員会。その第三者委員会ビジネスに群れ集う専門家たちがいる。彼らの正体とは。
2020年1月から2021年12月までの2年間に第三者委員会の設置を公表した上場会社のうち、会計処理に関連して設置されたものは合計53社にのぼった。集計を通じて浮かび上がったのは、第三者委員会の「もう1つの顔」とでも言うべき側面だ。
報酬額もさることながら、一覧で目立つのは大手監査法人の監査先の多さだ。中でもEY新日本監査法人は17社と突出している。次いで多いのはトーマツだが、社数はEY新日本の半分以下の8社。あずさは6社で、その次に多いのは準大手筆頭格の太陽で5社。PwCあらたは1社だけだ。
もっとも注目に値するのは、EY新日本の監査先で調査委を設置した17社のうち、半数以上にあたる9社で公認会計士の井上寅喜氏が委員に就任している事実だ。「『第三者委員会ビジネス』で誰が利益を得ているか」で紹介したサクサ、OKKはいずれもEY新日本の監査先で、井上氏が委員に就任している。
井上氏は2018~2019年にもEY新日本の監査先である日鉄鉱業とファルテックで調査委員を務めている。
井上氏とはいったい何者か。
監査法人の代表社員からコンサル会社代表に転身
井上氏が社外監査役を務めるあおぞら銀行の有価証券報告書によれば、1956年生まれの65歳で、1985年に公認会計士資格を取得。1987年にアーサー・アンダーセンのニューヨーク事務所駐在となり、アンダーセンではワールドワイドパートナーまで昇進した。
1999年にあずさ監査法人の前身である朝日監査法人の代表社員に就任。2008年に独立して会計事務所を開き、2010年にコンサルティング会社「アカウンティングアドバイザリー」を設立して代表に就任した。パイオニアや花王の社外取締役も歴任している。
出身母体である、あずさの監査先で井上氏が過去2年間に調査委員に就任しているのは、上場前からの粉飾が疑われているEduLabなど2社のみだ。2018年に3社、2019年に1社実績があるが、4年間で6社にすぎない。トーマツの監査先では2019年に1社あるだけ。やはりEY新日本の監査先での井上氏の調査委員への就任回数は突出している。
【2022年3月10日16時55分追記】初出時の記事の一部を修正いたします。
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