PTA改革で注目の元校長「保護者なしに働き方改革は実現しない」と語る訳 本多聞中&桃山台中の元校長・福本靖の視点
しかし、多様化の問題もあり、教員の労働環境は過酷だ。
「価値観の多様化だけではなく、外国籍や不登校、発達障害の子どもたちなど現象としての多様性が顕在化する中、新学習指導要領にはすべて丁寧に対応しましょうと記されています。実際、生徒に学校が合わせていかなければ子どもたちの諸問題には対応できないと思いますが、圧倒的に教員の数が足りません」
では今後、学校はどうすればよいのか。

兵庫県川西市教育委員会事務局教育推進部参事(働き方改革担当)
神戸大学教育学部卒、神戸市内の公立中学校3校の勤務を経て、2008年より教頭、教育委員会事務局指導主事、校長(22年3月定年退職)を歴任。神戸市立本多聞中学校、同市立桃山台中学校でのPTA改革、学力向上、ICT教育などの取り組みが注目を集め、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」受賞。共著書『PTAのトリセツ~保護者と校長の奮闘記~』(CAPエンタテインメント)。22年4月より現職
(写真:福本靖氏提供)
「校長は教育委員会の言うとおりに動くのではなく、保護者と教員の話し合いで両輪を回す体制をつくり、外部の人とも連携して『開かれた学校』にしていく。そうすれば、さまざまな問題を乗り越えられると思います。非協力的に見える保護者も、自分の子どもに関することには興味があるので、学校側がうまく情報を提示すれば、温度差はあれどちゃんと学校運営に快く協力してくれます。保護者が変わるよう学校も努力しなければなりません」
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度、以下CS)を活用するのも1つの手だという。文部科学省では学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを行うCSを推進している。
「CSは『地域』への期待を強調しすぎたこともあり、あまり拡大していません。しかし、CSは校長や教育委員会に対する権限や役割が法令に規定されており、任意団体のPTAと違って責任の所在も明確で、実際にこの枠組みで学校を変えようとするところも出てきています。例えば、本多聞中。21年度に神戸市立中学校PTA連合会を抜け、PTAから『保護者連絡会』に形を変えました。入学した子どもの保護者は自動的に会員になりますが、会費もないし強制的な活動もない。必要な活動にはボランティアを募り、CSも自主的に活動してくださる保護者が委員として参加しています」
福本氏は、この4月から兵庫県川西市教育委員会で教員の働き方改革を推進する業務に取り組んでおり、「これまでの学校運営の経験を生かし、教員、子どもたち、保護者のみんながいい思いをする改革をしたい」と意気込む。今後も、教育現場の課題解決につながる変革を期待したい。
(文:田中弘美、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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