こども家庭庁発足へ、子どもを守る「こども基本法」がない日本の大問題 末冨芳「子ども政策に横串刺す法律が必要」な訳

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現在、兵庫県川西市や神奈川県川崎市、東京都世田谷区などの自治体では、子どもの権利に関わる条例を定めていたり、子どもの権利を擁護する機関「子どもコミッショナー/オンブズパーソン」を設置しているところもある。こうした動きは、今後も推進されるべきだが、地域によって差が出ないよう国レベルでの法整備や機関の設置は急務だ。

もちろん、こども家庭庁の設置もこども基本法の制定も、まだ決まったわけではない。今後、国会の議論で大きな修正がないとも限らないし、議論を通じて新たな問題が浮上する可能性もある。子どもがワンストップで相談できる窓口の設置や、今回の骨子素案では見送りとなった国レベルの子どもの権利擁護機関の設置なども、今後検討していくべき課題だろう。

また今回、幼保一元化は見送られたが、今まさに困っている子どもたちに手を差し伸べるためにも、こども家庭庁の設置やこども基本法の制定を優先させるべきだと末冨氏は話す。

「日本では長い間、子どもや若者の声が封じられてきました。だから多くの子どもや若者が、何を言っても変わらないと諦めに似た思いを抱いています。一方で日本は、子どもや、子育てをしている親に冷たい社会です。私は、著書の中で子育て罰の国だと指摘したこともあります。けれども、こども家庭庁ができこども基本法が成立すれば、そういう現状も変わっていくと思います。ただし、私たちはようやく今、そのスタートラインに立とうとしているだけであり、これからまだまだ議論と政策の改善が必要です。そうしたプロセスを通じて、子どもや若者が、声を上げていけば社会を変えられると思えるような国、子どもや若者がもっと生きやすい社会にしていくこと、それが子どもを大事にするということだと思います」

次代を担う子どもを社会全体で守り育てる国へと変われるか。今後の議論を注視していくのはもちろん、大人一人ひとりが「子どもの権利」について知り、それを守る仕組みがどうあるべきかについて考えることが、まず必要ではないだろうか。

末冨 芳(すえとみ・かおり)
日本大学 文理学部教育学科 教授
京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・神戸大学大学院)。内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員、文部科学省中央教育審議会委員などを歴任。専門は教育行政学、教育財政学。共著『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)、『教育費の政治経済学』(勁草書房)などの著書がある
(写真:末冨氏提供)

(文:崎谷武彦、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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