今の政策は付け焼き刃と食い潰し。研究教育や産業界の人材投資を怠ったツケは大きい。
通常国会での予算審議も淡々と進み、政局はなぎ状態である。自民党と日本維新の会は憲法審査会を動かして、改憲論議を広げようとしている。新型コロナウイルスの感染が急速に広がる中、そして日本の社会経済の中長期的な衰退が進む中、憲法改正を優先課題と考える政治家は自分の趣味、あるいはイデオロギーで国政を壟断(ろうだん)していると言うしかない。
経済安全保障関係は今国会で唯一ともいえる重要法案である。さまざまなリスクの拡大に備え、サイバー攻撃への対応、部品の確保、知的財産の保全などについて新しい政策が必要だという問題意識は理解できる。しかし、肝心の日本経済の体力が衰弱している中で経済安保を論じるのは、老いぼれた侍が立派な鎧兜をあつらえるようなものである。なぜ日本で富をつくり出す力が弱まったか総括し、対策を立てることが必要である。
経済安保の一環として、半導体の生産能力の増強が目玉政策となり、政府は台湾のメーカーが日本国内に工場を建設する費用の半額、4000億円を補助するとしている。日本の半導体産業が復活するためには10年という時間と10兆円の費用がかかると東哲郎氏(元東京エレクトロン社長)は語っている(朝日新聞、2月7日)。
この記事だけではなぜ半導体産業が没落したかわからないので調べてみたら、東洋経済オンライン2021年9月22日の「『日の丸半導体』が凋落したこれだけの根本原因」という面白い記事が見つかった。日本の総合電機メーカーは半導体に特化した果断な意思決定ができなかったこと、国家プロジェクトが何度も実施されたが、その成果を個々の企業で生産につなぐ仕組みがなかったことなどが敗因として指摘されている。優秀な技術者はいたが、大企業経営者と経済産業省の官僚の失敗が日本の凋落を招いたということだろう。
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