安倍路線脱却が著しい首相。永田町では、その図太いまでのしたたかさが話題だ。
「マスクして我と汝(なんじ)でありしかな」──。明治、大正、昭和時代の俳人・高浜虚子の句である。昭和12年(1937年)1月23日、ホトトギス派の弟子・山口青邨(せいそん)の送別会が東京・向島の弘福寺で催された際に詠んだものだ。「私は私の道を行く。君は君の道を行けばいい」と言っているようだ。マスクは彼我を隔てる距離感の象徴なのだろう。
ひるがえって、最近の岸田文雄首相の“安倍離れ”が著しい。くだんのマスクがそうだった。岸田氏は昨年末、約8300万枚もの在庫を抱える「アベノマスク」を含む布製マスクについて、希望者に配付するとともに残りを今年度内に廃棄処分すると表明した。安倍晋三政権の失敗作「アベノマスク」など負の遺産を清算しようとする岸田流「断捨離」といっていい。
岸田氏は年が明けても、この基本姿勢を変えていないようだ。1月17日に召集された第208回通常国会の首相施政方針演説に以下のようなくだりがある。
〈幕末を生きた勝海舟は、「行蔵(こうぞう)は我に存す」とともに、「己を改革す」、自らを律することに重きを置きました。今、新たな時代を切り拓(ひら)くに当たり、統計の不適切処理はもとより、我々政治・行政が、自らを改革し、律していくことが求められています。その最大の原動力は、国民の声です。国民の声なき声に、丁寧に耳を傾ければ、そして国民と共に歩めば、自(おの)ずと改革の道は見えてきます〉
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