岸田政権が民主主義の常道を回復するには、自民右派の権威主義を封じ込める必要がある。
2020年の新型コロナウイルス感染の勃発・拡大以来、自民党は政権復帰以後で最大の危機を迎えた。まず、統治能力を失った安倍晋三政権が20年8月に突然退陣を表明し、菅義偉政権にバトンタッチすることで目先を変えた。その菅政権は21年の重要な選挙で敗北を続け、パンデミック第5波の中で民心は離反した。しかし、幸運にも感染者数は急減し、菅退陣・総裁選挙で再び目先を変えた。そして、岸田文雄新政権の下で衆議院選挙に勝利し、政権危機も収束したように見える。
22年は岸田政権が危機対応の臨時政権から本格政権に移行できるかどうかが問われる年となる。首相は「年頭所感」において、「普遍的価値の重視、地球規模課題の解決に向けた取り組み、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取り組み」の3つを政権運営の柱とすると述べた。選挙や世論調査に表れた民意は、政治の急激な変化を望まない一方で、権力の私物化や暴走には厳しい目を向けるものといえよう。岸田政権の下で、政党間の建設的な対話によって、コロナ第6波やスタグフレーションの予兆に対処することが、人々が今年の政治に望むことだろう。
政党政治全体にそのような能力を回復するためには、首相の言う普遍的価値について超党派的合意を確立し、政策的対立はあっても議会政治の運営自体はすべての党派が共同責任を負うという慣行をつくり出す必要がある。昨年12月に米国のバイデン大統領が主催した民主主義サミットに首相も参加し、ご満悦だった。隣に中国という権威主義大国が存在するので、それとの対照で日本は民主主義国家を自称しやすい。
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