たばこ税が上がったことを知らなかった。筆者は喫煙者ではなく、この手の税制改正にはアンテナが立っていない。一方、同じ税でもつねに考えているのが「炭素税」のことだ。本稿ではこの炭素税を中心に話を進めたい。
筆者は環境経済学者を名乗っている。環境政策のツールを設計・改良し、その仕組みと効能を分析、紹介するのが、主な仕事だ。例えば、気候変動対策として化石燃料の燃焼を減らすことを考える。そのための「政策ツール」は複数ある。炭素税はその1つだ。ほかに太陽光パネル設置への補助金、「クールチョイス」のような普及啓発キャンペーン、再生可能エネルギー(再エネ)発電の固定価格買い取り制度(FIT)、あるいは行動科学の知見に基づいて行動変容を促す「ナッジ」などがある。
炭素税は人気がない
炭素税の考え方は次のとおり。①炭素換算で1トン分の二酸化炭素を現在排出することで将来に起きる気候変動によって、社会全体が被る追加的な損害を考える、②損害を貨幣換算する、③損害額分の税を排出行動に課す。例えば、炭素換算で1トン分の石炭の燃焼に対して4000円程度の税を追加で課すイメージだ。その狙いは、気候変動を引き起こす行動のコスト・価格を変えることである。
炭素税は、嫌われ者として有名だ。数ある脱炭素政策ツールにも国民に好かれるものと嫌われるものがある。米国をはじめ多くの国で、炭素税の支持者は少ない。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら