インバウンド復活が見えず、今なお悶え苦しむ銀座。往時のにぎわいはもう戻らないのか。そこでユニクロが下した決断の裏側とは。
1月中旬、東京・銀座の中心で威厳を放つ三越銀座店の8階。コロナ禍でも日本人客でにぎわう地下の化粧品売り場などとは対照的に、客の姿がほとんど見当たらない。
以前は8階すべてが免税店フロアだったが、現在は一部の免税店を残し、半分のエリアを「工事中」という名目で閉鎖している。ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大し始めていた2年前の今は、春節の休暇シーズンを利用して観光に訪れた中国人らで混雑していた。
「現在のところ、(閉鎖エリアの)今後の具体的な活用法は決まっていない」(三越伊勢丹ホールディングス広報)。
同店の売上高に占めるインバウンド比率は、2020年3月期には30%程度だった。それが訪日客の蒸発により、直近の売上高はコロナ禍前と比べ4~5割減が続く(上図)。8階では、日本人客を呼び込むために「九州沖縄フェア」などと銘打って国内の名産品を並べるコーナーも作ったが、焼け石に水の状況だ。
日本政府観光局によると、2021年の訪日外国人数はコロナ禍前の2019年比で99%減の24万人にまで縮小した。これは統計公表を始めた1964年以来、過去最少の数字だ。足元ではオミクロン株の感染が急拡大しており、移動制限が解除されて訪日客が回復する時期はまったく見通せない。
インバウンドの恩恵を受けた代表格と言えば、百貨店を筆頭とする都市部の小売店や観光業者、化粧品メーカーなど。彼らは今、コロナ後に期待を懸けて投資を再開させるか、戦略転換に出るのか、究極の選択を迫られている。三越銀座店の8階のありさまは、いまだ決断できない苦悩の現れと言えるだろう。
売り上げ5割の外国人客が消えた
日本人客に軸足を移す――。三越の目と鼻の先に立つユニクロ銀座店は2021年秋、そんな大胆な決断に出た。
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