日本で注目されているジョブ型雇用は、欧米で採用されている本来のジョブ型雇用とは大きくかけ離れている。ジョブ型雇用の専門家の話をもとに、その功罪を整理した。
フジテレビと博報堂、三菱ケミカル、それに味の素――。
大手企業の間でここ2年の間、共通した動きがあった。それは50歳以上を対象とする希望退職を募ったことだ。日本では今、こうした人員整理が目立っている。
欧米で採用されている「ジョブ型」と呼ばれる雇用形態のもとでは、このような形での退職募集は通常考えられない。大した仕事ができないまま歳を重ねても、日本のように年齢をもとに退職を請われることはない。
日本型雇用は「甘くない」
雇用体系を整理し、欧米型の雇用を「ジョブ型」、日本型雇用を「メンバーシップ型」などと名付けたのは、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏だ。濱口氏は「日本のメンバーシップ型雇用がジョブ型雇用と比べて甘いと思うのはとんでもない。働かない50代が許されないという厳しさがある」と話す。
「年功序列」「終身雇用」といった特徴を持つメンバーシップ型雇用は、ともすればぬるま湯のようにも思われてきた。「職能等級制度」とも呼ばれ、年齢や勤続年数に応じて段階的に処遇(給与やポスト)も向上する。しかし、裏を返せば、本来はそれだけの結果を求められるということだ。
一方、欧米のジョブ型雇用は、「職務等級制度」と呼ばれるものだ。企業を人の集まりではなく、ジョブの集まりと見立て、ジョブの価値に値段をつける。ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)をつくり、職務内容や責任範囲、勤務地、必要なスキルをあらかじめ明確に示す。そして、その職務の椅子に座るのにふさわしい人を採用する。
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