外交とワクチン接種で支持率は底打ちだが、総選挙は苦戦必至。残された隠し球とは。
野球に例えれば、菅義偉首相は昨年9月に無死満塁で満を持して登板したリリーフエースだった。
確かに、マウンドに立った菅投手はいきなり「携帯電話料金引き下げ」と「不妊治療への保険適用」という豪速球で2者連続三振に討ち取り、残るはあと1人までいった。だが年が明けて程なく、自民、公明党議員4人の「夜の銀座」問題や森喜朗東京五輪組織委員会会長の「女性蔑視」発言といった自軍野手のエラーがあったうえに「長男の接待」疑惑で自らが乱調を来し、四球連発に加えて新型コロナウイルス対策すべてが後手に回るという思わぬ長打も浴びて、茫然自失の状態に陥った。
なぜ、菅投手は突然の乱調を来したのか。捕手の出す投球サインに従わない。ピッチングコーチがマウンドに駆け寄って助言しても断る投手なのだ。配球の組み立てだけでなく、試合運びまですべてを仕切る。まるでプレイングマネジャーである。
そんな菅投手は降板やむなしと思われたものの、何とか踏みとどまった。苦手意識が強いとされた外交・安全保障政策で見せ場をつくり、想定外のバッティングを見せたのである。4月に米ワシントンでジョー・バイデン大統領との日米首脳会談、続いて6月に英コーンウォールで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で「点数」を稼いだ。菅氏はバイデン氏との緊密な連携によって、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と「われわれは東京五輪・パラリンピック開催支持を再度表明する」の文言をG7首脳宣言に盛り込み、日米主導をアピールしたのだ。同点に追いつかれて延長戦となったが、自らのクリーンヒットで再び勝ち越した形である。
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