ジャスダック上場のバイオベンチャー「ラクオリア創薬」に対し、個人投資家である筆頭株主が異例の株主提案を行った。提案の背景に何があるのか。日本の株式市場が抱える歪みと課題とは。
ある個人投資家の「反乱」が大きな波紋を投げかけている。
名古屋市に本社を置くジャスダック上場のバイオベンチャー「ラクオリア創薬」。ファイザー日本法人の中央研究所を前身に、研究者たちが独立して作ったこの会社で、11.4%の株式を保有する筆頭株主が経営陣の交代を含む株主提案を行うと通告したのだ。
提案を行ったのは、さいたま市内の弁護士、柿沼佑一氏。同氏は、同社のガバナンスが悪いせいで業績悪化に陥っているなどとして、1月26日付けで、ラクオリアの谷直樹社長の交代を含む株主提案を行うと通告した。3月25日に予定される同社の定時株主総会で、株主の支持獲得をめぐって委任状争奪戦が起きる可能性がある(柿沼氏のインタビューはこちら)。
軽視される個人投資家
同社の取締役会は2月12日付けで株主提案に関する意見書を発表、柿沼氏に対する反論を開始した(会社側のインタビューはこちら)。同社の株主構成は、浮動株比率が38%弱と高く、個人株主の持ち分が多い。柿沼氏の提案に株主の賛同が集まれば、個人株主の提案による異例の取締役交代が実現しないとも限らない。
バイオベンチャー先進国のアメリカと比べ、日本の上場バイオベンチャーの株主構成は、機関投資家よりも個人投資家の比率が高い。にもかかわらず、バイオベンチャーのIR姿勢は個人投資家を重視しておらず、情報開示が不正確だったり、遅いという不満が渦巻いていた。
そこに降って湧いたのが今回の株主提案だ。個人株主による株主提案の例はあるが、今回は株主側が自ら、独自の取締役候補を立てたことに加え、会社の経営課題や改革案などを盛り込んだ、機関投資家顔負けの本格的な提案であることが新しい点だ。
会社側は「柿沼氏とは協議を続けているし、今後も続ける。受け入れられる部分があれば、受け入れていく」(髙松康浩取締役)と語るが、経営側の反論書は柿沼氏の主張をことごとく否定する内容となっている。
では、株主提案に踏み切った柿沼氏とはいったい何者なのか?
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