本誌コラムニスト:野村明弘
Q1 新型コロナウイルスはいつ収束するのか
新型コロナは、人類にとって非常に手強い存在であることが判明しています。2002~2003年に中国を中心に感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)や、2014年に西アフリカで大流行したエボラ出血熱などは、感染後に激しい症状が出るため、感染者を特定しやすく、感染者の隔離で対応することができました。ところが、新型コロナでは感染者の約8割が無症状や軽症とされ、さらに発症前から感染性も持つため、感染拡大を防止することが非常に難しい状況になっています。
一方で、感染者の約2割は重症化し、約5%は1~2週間程度で呼吸困難に陥って人工呼吸器やICU(集中治療室)での治療が必要となるといわれています。基礎疾患を抱える人や高齢者の重症化率が高く、厚生労働省の調べでは、全体の死亡率(死亡数/感染者数)は2.5%ですが、70代では6.7%、80歳以上では14.5%と高くなります(2020年5月6日時点)。
残念ながら有効なワクチンが実用化されるまでは、対策を緩めれば第2波、第3波の感染拡大が始まるのは必至です。主要国の政府が資金投入、規制緩和などを進め、ワクチンの開発を急いでいますが、一般にワクチン開発期間は10~15年(米国研究製薬工業協会「ワクチンファクトブック 2012」)とされ、新型コロナでも早くて2021年前半までかかると言われています。
Q2 なぜ対策を緩めると、第2波、第3波の感染拡大が始まるのか
感染症疫学には、「基本再生産数」という数値があります。これは「ある感染者が、その感染症の免疫をまったく持たない人の集団に入ったとき、感染力を失うまでに平均で何人を直接感染させるか」を示します。
新型コロナの基本再生産数は、暫定的に1.4~2.5とWHO(世界保健機関)は公表しています(以下のQ&Aでは、2.5と想定)。これは8~10の水痘(水ぼうそう)や16~21の麻疹(はしか)と比べて低く、2~3のインフルエンザ並みとなっています。
基本再生産数は、人間が接触削減などの対策を何も取らなかった場合の数値です。病原体の持つ”素の感染力”と言えます。これに対し、さまざまな対策を講じた際の実際の再生産数を「実効再生産数」と言います。重要なのは、実効再生産数が1を下回るかどうかです。1未満になれば、1人の感染者が平均で直接感染させる人数が1人未満になることを意味するため、新規感染者は減少に転じるからです。
政府の専門家会議によると、東京都の実効再生産数は、2020年3月中旬が2.6、同月下旬が1.7でしたが、その後の外出自粛要請や4月7日の緊急事態宣言発令によって対策が強化された結果、4月10日には0.5まで低下しました。また全国の実効再生産数は3月25日が2.0、4月10日が0.7と推計されています。
ただ、実効再生産数が1未満まで低下したとしても、対策を止めてしまえば、実効再生産数が上昇するのは自明です。下記のグラフのようなイメージです。例えば、1.7だった実効再生産数が0.5まで下がっても、対策を緩めたことで1.7まで再び上昇すると、それに伴って感染者が膨れ上がります。
したがって、ロックダウン(都市封鎖)により実効再生産数を1未満に下げた欧米諸国を含めて、現在、各国政府は実効再生産数が1以上に戻ることを避けつつ、いかに対策を緩和するかという難しい課題に直面しています。
Q3 では、最終的には国民が全員感染するしかないのか
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