
いしくら・ようこ 1949年生まれ。上智大学卒業、ハーバード大学大学院経営学博士修了。マッキンゼーのマネジャー、一橋大学教授等歴任。本書は国防軍出身のナアマ・ルベンチック氏との共著。監修のトメル・シュスマン氏はタルピオットの元チーフインストラクター兼副司令官。(撮影:今井康一)
多くのスタートアップ企業が勃興し、「中東のシリコンバレー」とも称されるイスラエル。その基盤を作っているのが、兵役中の若者向け技術エリート養成プログラム、「タルピオット」だ。イノベーション人材を生むためのヒントはどこにあるのか。
──タルピオットは起業家養成を目的にしたものではなく、あくまで兵役なのですね。
タルピオットの創設は、1973年、イスラエル国防軍が危機に直面したことがきっかけでした。不敗を誇っていた国防軍が、アラブ側に大敗を喫した。そこでヘブライ大学の教授2人が、厳選されたエリートを磨き上げ、短期間で技術革新を起こすことで軍の威信を高めるための教育プログラムを軍に提案したのです。
イスラエルでは、高校を卒業した男女に兵役が課され、適性に応じてさまざまな部隊に配属されますが、中でも優秀な学生1万人のうち、わずか50人しか選ばれないタルピオットに入ることは名誉とされます。
──どんな適性を持った若者が選ばれるのでしょうか。
高校で数学、物理、コンピューターサイエンスなどを学んだ、いわゆる理系の学生です。ただし、単に勉強ができるだけでは駄目。選抜過程では学力テストに加え、リーダーシップを測る数日間のワークショップ、面談とメンタルヘルスのテスト、という3段階でふるいにかけられます。
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