信長は本当に革新的なのか、疑いを持って歴史を学ぶ 国際日本文化研究センター 助教 呉座勇一氏に聞く

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ござ・ゆういち 1980年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。専攻は日本中世史。2014年『戦争の日本中世史』で角川財団学芸賞受賞。16年刊行の『応仁の乱』が歴史書では異例の大ヒットに。著書に『一揆の原理』『陰謀の日本中世史』、共著に『戦乱と民衆』など。(撮影:今井康一)
日本中世への招待 (朝日新書)
日本中世への招待 (呉座勇一 著/朝日新書/850円+税/284ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
武将や戦乱に詳しい中世史ファンは多い。だが、中世でも人々は一年中、戦っていたわけではない。どのような日々の営みが行われていたのか。歴史学の最新の研究成果を基に、あまり知られていない中世の暮らしを描く。

──中世史の研究が進み、私たちが学校で学んだ歴史とは違う見方もいろいろと出ているのですね。

例えば織田信長は本当に革新的だったのか。信長は従来の仕組みをすべて壊したように見られていますが、実は既存社会と妥協や共存を重ねながら変革を進めたことがわかってきました。革新性という点では歴史学界での信長の評価は下がっています。ビジネス雑誌では「信長に学ぶリーダーシップ」といった取り上げ方をされるし、英雄が世の中を一気に変えたと考えられがちですが、実際は一人でやったわけではない。

そもそも中世を武士中心と捉えてよいのかという議論も進みました。まだ身分は固定されず、貴族や寺社の力も強い。身分が固定し武士が力を持った江戸時代とは違います。皆さんの関心が高い、権力闘争など政治史だけ見ていても、歴史の本質に近づけません。中世の日常生活について解説した一般向けの概説書が少ないので、この本を書きました。

──中世史のスーパースターである網野善彦さんに対する異論も取り上げられています。

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