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本田宗一郎「うちのセールスマンはお客さん」 ホンダ創業者が1954年に語った独自の哲学

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「東洋経済新報」1954年11月13日号

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1954年11月13日号の本田宗一郎氏へのインタビューをお届けする。世界のホンダもこの時は、まだ創業8年。バイクの販売で急成長している時のインタビューである。「乏しい金を有効に活かすためには、まず何より、時を稼ぐこと」「うちのセールスマンは、給料を出さないお客さんなんです。このセールスマンを育てるには、品物を育てなければならぬということです」「エンジン屋はエンジンばかり、オートバイ屋だからおまえはオートバイしかできないというような考え方が、そもそも間違っているんだ」など今も古びない金言が散りばめられている。

精度の向上こそ発展の鍵

まず時を稼ぐ

 御社は、短期間に急速に発展し、大きな工場も建設されておられるのですが、今日この頃では不況のために競争も激しくなっています。この際、おたくでは、どのような対策を講じておられるのですか。

 不況不況といっても、一般の需要はあるんです。新たに需要層をひろめるものは、商品の質です。うちがいままで次から次へと手を拡げて来たことは、一見無謀に見えますが、同じ製品で、自分のところの製品はここだけが違うという自信がない限り工場の拡張はやらなかったはずです。

何しろオートバイは新しい事業で戦後急に伸びたものですから、玉石混淆があったといえるのではないかと思う。

 小資本ながら、おたくが、そのような業界に処してきた根本的な行き方は……。

 日本人は、とかく金がなければ何も出来ないと考えがちですが、それでは、中小工業は何時までたっても浮かび上れない。乏しい金を有効に活かすためには、まず何より、時を稼ぐことです。タイムリーに稼ぎ、乏しい金も、大きく活用する。ということは、同時に、末端消費者あっての我々メーカーなのですから、お客のその時時の需めにピッタリ合った商品をつくることでもある。仕事は、そのよいアイデアと時をうまく稼げば、やってゆける。

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