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「災害に弱い土地の利用規制を考えよ」 インタビュー・台風19号がもたらした教訓/東洋大学 理工学部建築学科 教授 野澤千絵

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のざわ・ちえ ゼネコン勤務後、2002年に東京大学大学院博士課程を修了(工学博士)。東京大学特任助手などを経て、2015年より現職。(撮影:ヒダキトモコ)

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台風19号の被害を機に、街づくりとはどうあるべきか、都市開発や土地利用が専門の野澤千絵東洋大学教授に聞いた。

──首都圏をはじめ、東日本の広い地域で堤防が決壊するなど、浸水が発生しました。開発に問題はなかったのでしょうか。

日本の都市計画は、土地利用の規制が緩い。優良な農地、工業専用地域、指定実績の少ない災害危険区域などをのぞけば、災害リスクが想定されるエリアであっても、ほぼどこでも住宅を建てられる。例えば、台風19号で浸水した埼玉県川越市の特別養護老人ホームは市街化調整区域にある。原則として市街化を抑制すべき区域で、河川沿いなど浸水リスクがある場合もある。だが、農地だったということもあり、地価が安く、土地が広いため、多くのこうした高齢者福祉施設が建てられてきた。浸水想定区域だからといって土地利用の規制があるわけではない。

もう1つ、今までの建築基準法では不燃化や耐震化の基準は強化されてきたが、昨今の気候変動の中で増えている水害についてはあまり重視されてこなかった。

今回の水害を機に、浸水が考えられる区域には、電気設備は想定水位より下には置かない、地下空間への浸水を防ぐ構造にするといった対策が必要だ。ただ、想定外のことはつねに起こる。今後ますます人口が減って、災害対応の担い手や財政が厳しくなる。すべてが土木的なハードで守れるという幻想は持たないほうがいい。既存の市街地の減災に努めるのと同時に、災害リスクが想定されるエリアでは新規開発の規制を強化することが重要だ。

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