筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長・教授 柳沢正史 ヒトはなぜ眠るのか? 睡眠研究で世界を牽引
若き医学生は目の前の患者を救うのではなく、「あさっての患者を助ける」と誓った。その志は睡眠研究で結実しつつある。眠りの謎に挑む人生。
「嘆かわしい人生の喜びの短縮」。英国の作家・ヴァージニア・ウルフはそう記し、睡眠によって、人生の享楽の時間が失われることを憂えた。
ヒトを含む動物はなぜ眠くなるのか、なぜ眠らなくてはならないのか。解明できれば、ノーベル賞級の仕事だとされる。
睡眠の基礎科学の分野で世界のトップを走るのが、筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)の機構長である柳沢正史(やなぎさわ・まさし)だ。
IIISは文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(合計13拠点)の1つに採択され、2012年に設立。年間6億円の研究費が10年間提供され、柳沢は研究員や大学院生など140人余りの組織を率いる。近年、睡眠・覚醒の制御に直接関わる遺伝子を見いだすなど、睡眠の本質に斬り込む成果を次々と生み出している。
幼い頃、豆腐屋の前で、水に浸してあった大豆を機械が砕くさまをじっと見つめていた。小川の渦を飽かずに眺めていたこともある。物事の仕組みを知りたい。子どものままの好奇心は今も全開だ。
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