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三洋マンの敗れざる人生、常識を覆す掃除機とは? シリウス亀井隆平社長の半生記

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東新製作所の生産技術センターにて(撮影:今井康一)
三洋電機の元社員が立ち上げたベンチャーが、掃除機市場で注目を集める。困難を乗り越え、新たな製品を創り出そうとする男の物語。

2018年12月、東京都大田区中央。区の土木試験場だった建物を改造したガレージの奥にある窓のない小部屋で、5~6人の男たちが、ハンディータイプの掃除機を前に熱心に議論していた。

「このノズルがもう一回り小さくなって、バーッと強力に水を吹き付けられるといいんだよね」

「あそこの会社は小さいのを作ってるけど、あれだと値段が高いんだよなあ」

「やっぱり自前で設計したほうがいいかねえ」

ここは「板金加工をやらせたら日本一」ともいわれる東新製作所の生産技術センターだ。

水洗いクリーナーヘッド「スイトル」が大ヒット

テーブルの中心にいるのは亀井隆平(かめい・りゅうへい 54)。身長180センチメートル、体重100キログラムの巨躯で、笑みをたたえながら周囲の声に耳を傾けている。元三洋電機社員で、社長だった創業家の井植敏雅や会長だった野中ともよの下で働いた経験もある。

次期製品をめぐって主要メンバーが大田区の東新製作所で相談(写真:今井康一)
右が東新の石原幸一社長(撮影:今井康一)

亀井は、三洋がパナソニックに買収された後、独立して家電ベンチャーの「シリウス」を立ち上げた。シリウスは2017年に発売した水洗いクリーナーヘッド「スイトル」を大ヒットさせた企業だ。

東新製作所に集まった男たちが侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をしている机の上に置かれているのは、シリウスの次期主力製品「ウイルス・ウォッシャー」の試作機だ。

亀井を囲む男たちの1人は、東新の代表取締役の石原幸一。東新は気密性や強度を求められる立体構造物の溶接では高い技術を持ち、医薬品メーカーや水処理業者向けのタンクや容器を得意とする。宇宙航空研究開発機構の依頼で、宇宙ステーションで使われる「宇宙トイレ」の開発にも協力している。

もう1人は家電の卸売会社・石田の営業部主任、角田将之。本業がミシンメーカーの石田はその営業力を生かして家電の卸に進出し、ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラなど家電量販大手に販路を持つ。最近では2万2900円のトースターを大ヒットさせた家電ベンチャーのバルミューダや、英国の掃除機メーカー、ダイソンの製品を最初に取り扱った会社として知られている。角田はいわば家電の目利きだ。

「その道のプロ」をもって任ずる男たちは、世の中をあっと言わせる「次世代掃除機」を世に送り出そうとしている。

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