発明王ダイソン、「強さ」の秘密 ついに見えてきたEV参戦への道のり
掃除機やドライヤーなど、成熟市場で革命を起こしてきたダイソン。それを支えるコア技術、「デジタルモーター」とはいったい何か。
東京23区より少し広いくらいの国土に約560万人がひしめくシンガポール。産業の7割を金融や観光などのサービス業が占めるこの国で、2020年に約40年ぶりとなる自動車工場が建設されることが決まった。工場の主は、サイクロン式掃除機で有名な家電メーカーの英ダイソン。21年に発売を予定する電気自動車(EV)の専用工場で、18年末に建設工事が始まった(次記事参照)。
家電から畑違いのEVへ──。17年9月にダイソンがEV参入を表明すると、自動車業界からは実現性を疑問視する声が相次いだ。しかし、ダイソンはいたって正気だ。同社CEOでEV事業の責任者、ジム・ローウェン氏は「新領域に手を広げるというより、当社の得意とするエンジニアリングに集中する」と語り、あくまでこれまで蓄積してきた技術の延長線上でEV開発を進める構えだ。では、EVにつながる同社の「得意な技術」とはいったい何なのか。
ダイソン社は、デザインエンジニアのジェイムズ・ダイソン氏が、自宅にあった掃除機への不満から開発した、吸引力の低下しないサイクロン式掃除機(発売は1998年)が出発点。そこから、羽根のない扇風機(同09年)、穴の開いたドライヤー(同16年)など、何十年も技術の発展がないような日用家電の分野でイノベーションを起こしてきた。
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