いわた・きくお●1942年生まれ。東京大学経済学部卒業。学習院大学経済学部教授などを経て、2013年から5年間、日本銀行副総裁。専門は金融論、都市経済学。『デフレの経済学』『日本銀行は信用できるか』など著書多数。メディアでの発言も多く、マネーサプライ論争は有名。
第1級の政策決定開示 低水準のエリートに涙
評者 兵庫県立大学客員教授 中沢孝夫
「白川日銀と民主党政権」と「黒田及び岩田日銀と安倍政権」を比べると、経済状況はまったく異なる。
本書を読むまでもなく、ここ5年、経済はずいぶんと好転した。失業率の低下(2.3〜2.4%は完全雇用といえる)、有効求人倍率は1.6倍を超えており、職業選択の自由を行使できる十分な水準に達している。そして企業の倒産件数にいたっては1990年のバブルのピーク時につぐ低水準である。企業の利益はずっと拡大基調だ。
もちろん「今後の副作用の危険性」はいくらでも指摘できる。しかし、副作用の危険性があるから今の経済が停滞していてもよい、ということにはなるまい。
いつの時代にも極端な意見はあり、現在の筆頭は国債価格暴落論だろう。暴落すると思う人は本書で紹介されているように「国債のクレジット・デフォルト・スワップを大量に買ったらどうか」と評者も思う。自説を信じて大もうけに乗り出すとよい。
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