ロシア疑惑の糾明へ、特別検察官が税務書類の提出を求めるかどうかが焦点になってきた。大統領の弾劾は避けられても、政権は波乱含みだ。
「あれはロビイストだな」「あそこで談笑しているのはホワイトハウスのスタッフじゃないか」
薄暗いバーの中、コの字型のカウンターをいちべつし、二人の米紙記者が声を潜める。視線の先ではブラックスーツを着こなした白人の男女が談笑している。
バーがあるのはホワイトハウスから徒歩十数分のトランプ・インターナショナル・ホテル。かつて中央郵便局として使われていた歴史的建造物を全面的にリニューアルし、昨年9月に超豪華ホテルとして開業した。今では米国政財界や外国政府の関係者、ロビイストが集う権力の中心地と化しており、パーティ会場では連日のように、中東各国の大使館や圧力団体がイベントを開催している。
冒頭のように客の出入りを観察するのは、トランプ大統領の疑惑を追及してきた『マザー・ジョーンズ』誌の記者たちだ。同誌のラス・チョーマ記者は「このホテルはトランプの利益相反のおそれがある」と言う。
ここでいう利益相反とは、大統領が個人的な利益を優先させ、本来行うべき政策を取らないことを意味する。歴代最低といわれる支持率の背景には、トランプ氏が政治を私的な経済活動に利用しているのではという米国民の疑念がある。仮にホテルの利用料金として法外な資金が動いていたとしても、現状の制度では誰も証明することはできない。
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