
大事なのは生じたことにいかに対処するかだ
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
「シュードッグとは靴の製造、販売、購入、デザインなどすべてに身を捧げる人間のことだ。靴の商売に長く関わり懸命に身を捧げ、靴以外のことは何も考えず何も話すこともない。そんな人間同士が、互いにそう呼び合っている」と本書にある。
「人が一日に歩く歩数は平均7500歩で、一生のうちでは2億7400万歩となり、これは世界一周の距離に相当する」そうだ。それゆえ靴は人間の暮らしに欠かせない。特にアスリートにとっては、よい靴は人生そのものである。靴のよしあしがレースつまり人生を決めてしまう。そしてつくる側も人生のすべてを賭けている。
このナイキの創業者の自伝には、起業家が経験するあらゆることが記されている。よい靴をつくり、米国そして世界にそれを届けるために、素材の開発、機能の向上、デザイン、マーケティング、そして製造現場(工場)の構築などに全力を挙げ会社を発展させるために著者の渡った橋は、危険と興奮と感動に満ちている。