Bruce C. Greenwald●米コロンビア大学ビジネススクール教授。グラハム・ドッド投資ヘイルブルンセンター長も務める。共著に『新しい金融論』『競争戦略の謎を解く』など。
伝統的な経済学に再考を迫る
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
経済成長論の始祖であるロバート・ソロー教授以降、イノベーションが経済発展の最大の源泉であることは広く知られている。ただ、新技術が開発されたからといって、直ちに経済的豊かさにつながるわけではない。多くの人が効果的に使いこなすことが不可欠で、学ぶことが重要だ。
先進国でも、ベストプラクティスを持つ企業とそうでない企業の差は大きい。経済成長を高めるには、トップランナー企業の躍進だけでなく、そのノウハウを他企業が学び、平均的な企業の生産性を底上げすることが必要だ。本書は、一国経済の成功には、ラーニング・ソサイエティの構築が不可欠と主張する。
19世紀に欧米が豊かになったのも、20世紀終盤に東アジアの国々が豊かな国の仲間入りをしたのも、ラーニング・ソサイエティへの移行に成功したからという。知識経済化の進展で、ラーニングの重要性は益々高まっている。
本書が特徴的なのは、経済的厚生を高めるには市場の力だけでは不十分で、政府も大きな役割を果たすと主張する点だ。伝統的な経済学では、政府介入は非効率性を生むと批判されてきた。しかし、ラーニングやイノベーションへの投資は、スピルオーバーが発生するため、市場に任せたままでは、社会全体の最適量より過少となる。資源の効率利用は重要だが、伝統的な経済学が見落としてきたラーニングはそれ以上に重要で、政府の後押しが不可欠という。
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